箕面自由学園小学校 原 誠治校長先生(当時)インタビュー
原 誠治 校長先生(当時)
箕面自由学園の特徴を教えてください。
箕面自由学園では「高い学力・豊かな心・たくましい気力と体力」を備えた子どもを育てることを目標としています。そのための取り組みとして、「第1の学力」として「確かな基礎学力」を身につけること、同時に「第2の学力」として「豊かな情操」を培うことを通してより高い育ちへ導くように指導しています。学力と心を共に育てる。それが、箕面自由学園の特徴ですね。
「第1の学力」を定着させ伸ばしていくためには、机の上の学習だけでは駄目だとおもっています。「第2の学力」として、本物・実物にふれて観察し、感動し、ものを見つめる心を育てることによって、学びをより確かにし、深めて行くことが出来ると思っています。ですから、学園は行事が多いですよ。ふるさと体験学校、ふれあい林間学校、なかよし湖畔学校、臨海学校、しめなわ作り、春のスキー学校など色々な行事があります。1年生は、なかよし湖畔学校でのザリガニ釣りを特に楽しみにしていますね。
この「第2の学力」の中に、「七つのがんばり」を挙げています。
「七つのがんばり」とは、
@気持ちのよい あいさつをします。
Aきれいな言葉をつかいます。
B「くん」「さん」をつけてよびます。
C目を見て話し、聞きます。
D制服をきちんと着ます。
Eなわとびを毎日します。
Fマナーを守って登下校します。
です。1日、しっかりと取り組めたかを表にしています。しっかり取り組めたのなら◎、まぁまぁだなと思う日は○、あんまり出来なかったと思う日は△をつけていきます。表が一杯になったら、担任の先生ががコメントを書き、次は教頭先生か私がコメントを書いて返しています。全児童のコメントを書くのは時間のかかる仕事です。でも、まわりの先生達が見守って応援していることを知って貰いたい、一生懸命に取り
組めば、必ず認めて貰えるということを知って貰いたいからコメントを書いています。コメントを書いているうちに、子どもと先生の距離が縮まり、先生と子どもが共に成長している様です。
学習面での取り組みの工夫を教えてください。
「第1の学力」として、基礎学力を身に付けるように工夫しています。まず、基礎学力の徹底を図るためにプラクティス・タイム(P・T)を設け、漢字力・計算力が定着するようにしています。チャレンジタイム(C・T)というのも設けています。これは放課後、自主的に学ぶもので、自分の深めたい内容や教科に取り組むものです。
プラクティス・タイムの延長として、年2回、漢字チャンピオン大会、計算チャンピオン大会を実施し、定着度を確認しています。漢字能力検定にも全員参加して、平成18・19・20年度と、3年連続で優秀団体賞を受賞しています。これも、日々の積み重ねの成果ですね。
授業にも工夫しています。本校独自の教育課程全体を考慮して作った「全教科学習指導計画」に基づいて学習していきます。実際の授業としては、大学の授業のように一方的に先生が話すのではなく、体験と実践を第1と考え、本物にふれる様にしています。社会科や理科であれば、実験し、推理し、話し合うことを大切にしています。社会科では、ポストを作ったりします。記憶した数を問うのではなく、体験・実践を通して推理していく。それが、積極的な姿勢を生み、思考力を育てることにつながると思います。
行事面の特色を教えてください。
学園の特徴でもお話ししましたが、各学年、本当に様々な行事があります。その中でも、もう20年続いている5年生の「ふるさと体験」が一番の特色だとおもいます。
これは、岡山県美作市小房にあります小さな農村に行きまして、6月に田植えをし、7月には苗の成長を観察し、10月には稲刈りをし、最後は採れた米を味わうというものです。他校でも、田植えや稲刈りを体験するところはありますが、7月に農家にホームステイして、自分が植えた稲の成長を実感するというのは少いと思いますよ。子ども達は稲の成長に驚きますね。こういう一連の体験を通して、感動する心、人や自然とのふれあい、働くことの大切さなどを学んで貰いたいと思っています。
私は、稲刈りの時にはいつも「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということわざを話しています。子ども達は本物を見ていますから、納得してくれますね。あとは「第2の学力」として七つのがんばりの中に、「なわとびを毎日します。」を設けています。毎日、10分以上なわとびをして、進級を目指しています。子どもの中には、なわとびの苦手な子もいます。進級を目指してはいますが、大切なのは頑張り続けることで「根気強さ」を育てたり、「達成感」味あわせたりすることです。やれば出来る。出来た。じゃ、次も頑張ってみようかと思うことが大切なのです。
どのような子どもに育てていきたいのですか?
箕面自由学園は、「教養の高い社会人の育成」を建学の精神としています。その精神にのっとり、知育・徳育・体育のバランスがとれ、調和した人間作りを目指しています。自立した人間に育てることが大切です。そうでないと社会は担えない。良い大学に入ることが人生の目的ではないと思うのです。自立した人間になって社会の一員になって働ける人にならなければ駄目なんです。学園の子には、社会を担える人になって貰いたいですね。いくら学力があっても それを生かすことが出来なければ駄目なんです。今、良い大学に入っても辞めてしまう人が多いですね。それは、社会を担うという心が育っていなかったのではないでしょうか。だから、机の上だけの学びではだめなんです。「七つのがんばり」にもあるように、挨拶・思いやり・仲間として行動することなどを重要視しながら人間力を培うように学習を進めて行かないといけないと思いますね。
これから小学校受験をされるご家庭に伝えたいことはどのようなことですか。
子どもは宝物です。その宝物をどう光らせていくかが問題です。表面的な光、例えばお勉強だけ出来たらいいとして、あとはただ甘やかされたお子さんと、内面的な光、例えば人間性を研くことを大切にしてお手伝いなどに参加させているお子さんでは光り方が違います。試験は出来ていても、内面の光っていないお子さんはわかります。内から外から、両面から光り輝くような宝物にしたいですね。
ご家庭ではもっと言葉を掛け合い、子どものあるがままを知ることを心がけてくださ
い。ありのままを見れば、叱ることは少なくなってくると思います。叱ってばかりの
子は自信を失って、やる気をなくしてしまいます。我が子のよさを認めながらしっかりとほめてやってください。「ほめて育てる」ことが大切だと思います。
■上記のインタビューから2年が経ちました。箕面自由学園小学校のこの2年間の変化をお聞きしてみました。
変化の一つは、昨年から、放課後の活動として、学園のゴールデン・ベアーズのコーチによる指導で、1年生から6年生までの希望者で、週1回の活動をするチア・リーダー部を創部しました。ただ、1年生は学校に慣れることが先決ですから、1年生の参加は2学期からとしています。でも、1年生さんたちは待ちきれないようですよ。1〜2年生だけで40人以上の児童が入部を希望しています。このほかにも、今年から英語の歌を通して英語の力を育てることを目的とした「英語の歌」教室(1〜2年、3〜6年)や、英検を目指す勉強をする教室、リコーダーアンサンブル教室が出来ました。どの教室も人気でして、たくさんの児童が参加しています。これらはみな無料で受けらます。
変化の第2は、昨年度、中学進学において85%の児童が第1志望に合格したことです。箕面自由学園では、内部中学を希望する児童には、一定の基礎学力が身についていれば校長推薦が付きますし、また、希望する外部中学を受験することも出来ます。5、6年生には、午後の学習を発展的学習の時間とし、受験学力の伸長を図っていますし、放課後のチャレンジ・タイムでは、さらに自主的に学習を深めることが出来ます。これらの学習の効果によって、第1志望校への進学を果たしたのだと思います。しかし、受験学力の伸長とともに、箕面自由学園がこれまでずっと大切にしてきた、「確かな学力」を第1の学力として大切にしながら、同時に「豊かな情操」を第2の学力として、より高い育ちを目指してきた結果ではないかと考えています。
子どもたちが高い育ちをするためには、まず豊かな情操を培うことが大切だと考えています。情操面が育ってからこそ確かな学力が身につくのだと思うのです。
そして、体験と実践を大切にしています。机上の学習にとどまらない実践を通じた学習や、実験・観察・ものづくりなどにおける「やってみよう」という姿勢を大切にしているのです。それは、体験や実践を単なる遊びではなく、学びをより確かにし、理解を深めるものととらえているからです。こうした、本校の教育姿勢が子どもたちをより高い育ちへと導いたと証明されたのではないかと考えています。合格した中学校もかなり難しいところばかりでした。大阪星光学院、高槻、清風、甲陽学院、同志社、洛星、洛南付属、西大和等に進学しています。
この2点が、この2年間の大きな変化ですね。
掲載 2011年5月7日
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取材協力 幼児教室 けいkids+
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