第8回
従来、「生活その他」の領域として括ってきた内容のうち、常識問題以外で、とくに押さえておかなければならない問題は、「1.回転推理」「2.法則性の理解」「3.魔法の箱」の3つです。
この3つは、6領域のどこかに入れようと思えば入れられる問題ですが、「変化の法則性を探し出す」という課題ですので、その共通項をふまえて「推理」としてきました。この課題は、とくに目新しいものではありませんが、問いかけの仕方にかなりの工夫が見られます。具体的に見ていきましょう。
次の問題は、「回転推理」の問題です。@は観覧車の基本問題ですが、Aのような位置移動もともなう回転問題もあります。また、サイコロを使った回転推理も工夫されています。
@回転推理(学習院初等科)
観覧車が動物たちを乗せて右に回っています。
・ネズミさんが1番上に来たとき、ブタさんのところには誰が来ますか。右から選んで指でさしてください。
・ネズミさんが1番上に来たとき、サルさんは誰のところに行きますか。右から選んで指でさしてください。
A位置の対応と回転推理(白百合学園小学校)
・上のお部屋を見てください。左のマスの中にある形や線を右のマスの同じところにかいてください。
・下のお部屋を見てください。左の○が回って、大きい▲が右のように移動しました。他の形はどうなりますか。右の○の中に形をかいてください。
B回転推理(早稲田実業学校初等部)
・上のサイコロを見てください。笑っているクリの絵の反対側には、笑っているクリの絵がかいてあります。リンゴの絵や怒っているクリの絵の反対側にもそれぞれ同じ絵がかいてあります。このサイコロを矢印の方向に1回転がしたとき、1番上には何の絵が来ますか。下の絵から選んで青い○をつけてください。
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この中で注意すべき点は、@の観覧車では2番目の質問です。また、Aの問題では、○を回転した時の位置関係が間違いやすいと思います。Bのサイコロの回転では、左右の回転だけでなく、前後の回転も入っているところが要注意です。1回だけの回転ですからあまり難しい問題ではありませんが、これが複数回転した問題になると、かなり難しい問題に変化します。
次に、「法則性の理解」に関する問題です。従来「図形系列」と呼んでいた問題ですが、図形以外のものが変化したり、それを使って迷路に仕立てたりしています。また、ブレスレッドという身近なものを使った、並び方の法則性の問題も登場しています。以下がその具体的な問題です。
○図形系列(田園調布雙葉小学校)
・並んでいるものの順番を考えて、空いている「?」のお部屋に入るものを下から選んで○をつけてください。
○系列迷路(立教女学院小学校)
・左上の→から右下の→まで、上にかいてある数の順番をくり返して、線をひきながら迷路を進んでください。縦と横には進めますが、斜めには進めません。同じマスを2回通ってはいけません。
○法則性の理解(早稲田実業学校初等部)
6個のビーズをひもに通してブレスレットを作ります。
・左のお部屋のビーズのひもを結んで輪にしたものを右から探して、赤い○をつけてください。並び方をよく見てください。
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最後に「魔法の箱」と呼んできたのは、トンネルを通過するとある変化が行われ、その法則性を導き出して他のものに当てはめるというものです。小学校の算数における「ブラックボックス」という課題は、箱の中でどんな計算が行われたかを考えて、答えを導き出す課題です。一般的に、数の変化が求められますが、最近では、次に紹介する慶應義塾横浜初等部の問題のように、数以外の変化が登場しています。また、この問題や立教女学院小学校の問題のように約束事が既に与えられている場合と、雙葉小学校の問題のように自分で変わる約束を探しだす問題と両方ありますが、やはり、自分で見つけ出すことが必要な問題ができるように練習してください。
○魔法の箱(慶應義塾横浜初等部)
今からお約束を言いますから、よく聞いてください。ハサミの箱を通ると、ハサミで切られて形が左半分だけになります。コマの箱を通ると、形がコマのように回って右と左が反対になります。風ぐるまの箱を通ると、形が風ぐるまのように回って、上と下が反対になります。
・このお約束で、左にある形が箱を通るとどのような形になりますか。それぞれ右から選んで黄緑の○をつけてください。
○魔法の箱(立教女学院小学校)
上のお約束を見てください。○の箱を通ると数が1個増えます。△の箱を通ると1個減ります。クローバーのお部屋を通ると2個増え、スペードの箱を通ると2個減ります。
・このお約束で、下のように左のものが箱を通ると、いくつになって出てきますか。その数だけ右のお部屋に○をかいてください。
○魔法の箱(雙葉小学校)
上のお部屋を見てください。箱の中を通ると、数が変わって出てきます。どんなお約束で変わっているのか考えてください。
まず、左下のお部屋を見てください。練習してみましょう。トンボ1匹が白い箱を通ると、何匹になって出てきますか。その数の○を下のお部屋にかいてください。
そうですね。白くて四角い箱を通ると、数が1つ増えるので、2匹になります。2個の○をかけばいいですね。・続けて次からの問題をやってください。
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以上、3つの典型的な問題を紹介しましたが、ここで紹介した問題は、必ずしも新傾向の問題ばかりではありません。昔からある定番のような問題もありますが、それだけでなく、小学校側の工夫に対応できるだけの理解力を身につけなくてはいけません。そのためには、自ら解き方を発見していけるような粘り強い学習が必要です。解き方を教え込むようなやり方では、形の変わった問題には対応できません。
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