第6回
言語領域は、将来の「国語科」につながる内容です。しかし、小学校受験では「読み・書き」は課さないという暗黙の了解があるため、国語科の4つの柱である「聞く力」「話す力」「読む力」「書く力」のうち、「聞く力」と「話す力」が入試問題の中心にならざるを得ません。また、ごく少数ではありますが、最近では「読む力」を問う問題も出始めています。
「聞く力」の代表として「話の内容理解」、話す力の代表として「お話づくり」・・・この二つが言語問題の中心ですが、そこにもう一つ「言葉の理解」が加わって、入試問題が作成されています。この言語領域は、他の領域とくらべて新傾向と言われる問題は少ないのですが、同じ単元の問題の中で、問いかけの仕方が少しずつ変わってきている様子がうかがえます。最近の傾向をまとめると次のようになります。
1 話の内容理解においては、質問事項が多様化している
これまでの質問事項は、登場人物・順序・数の記憶・登場人物の行為の4つが基本でしたが、最近の問題は、数にしろ、図形にしろ、位置表象にしろ、どんな問題が出題されてもおかしくありません。とくに、数の変化に関する問題が多く出題されています。昔のように話を記憶するというよりも内容をしっかり理解することが求められています。また、最近は少なくなりましたが、最初から最後まで、すべての問題をつながった一つの話の中で問いかけていくという方法で問題を作っている小学校もありました。次のような問題は、質問が多様化した最近の典型的な問題です。
○ 話の内容理解 @・A(日本女子大学附属豊明小学校)
*1枚目のペーパーを出して、お話を聞かせてください。・次のお話を聞いて後の問題に答えてください。
ブタさんの『もぐもぐレストラン』は、スプーンとフォークの絵が屋根にかいてある四角い窓のレストランです。レストランの人気メニューはコロッケです。レストランがお休みの日に、ブタさんは新しいメニューを作ろうと思って、首にスカーフを巻き、水色の水玉模様のお洋服にチェックのスカート、縦に長い帽子をかぶって、お買い物かごを持ってスーパーに出かけました。レストランを出て少し行くと林があって、その下には黄色いイチョウや、赤いモミジの葉っぱがたくさん落ちていました。スーパーに着くと、買おうと思っていたジャガイモとタマネギはありましたが、ニンジンが売り切れていました。「これでは何も作れないな」とブタさんが思っていると、近くにいたネコさんが「ニンジンならウサギさんがたくさん作っているから、分けてもらえるんじゃない?」と教えてくれました。ブタさんは、ジャガイモとタマネギを買ったあと、ウサギさんのお家に行ってみることにしました。スーパーを出て少し歩くと川があります。その川にかかった石の橋を渡ると、ウサギさんのお家です。ウサギさんのお家に着いたブタさんは、スーパーでニンジンが売り切れていて買えなかったことをウサギさんに話しました。ウサギさんは「たくさんできたから、どうぞ」と言って、ニンジンを分けてくれました。ブタさんはウサギさんにお礼を言って、ウサギさんの家を出ました。レストランに帰る途中、森の近くでリスさんに会いました。リスさんはドングリをくれました。リスさんと別れたあと、パン屋さんの前を通って橋のところに行くと、今度はクマさんに会いました。クマさんは「これでおいしいものを作ってね」と言って、ブタさんにクリとキノコをあげました。橋を渡ると、ウシさんの牧場がありました。ウシさんには、ビンに入ったミルクをもらって、レストランに帰りました。次の日、レストランからいい匂いがしてきました。その匂いは、山や森の奥まで届きました。おいしそうな匂いをかいで、あちらこちらから、たくさんの動物たちが集まってきました。レストランの新しいメニューはグラタンです。一番最初に並んだのはシカの親子です。パンダさんは、子どもが熱を出してしまったので、お父さんだけが来ていました。最後に並んだのはクマさんです。クマさんは並んでいる途中、お腹がグーグー鳴ってしまいました。みんなは「おいしいね」と言いながら、グラタンをお腹いっぱい食べました。
問1.ブタさんがスーパーで買い物をしたあと、帰るまでに通った道を線でたどってください。
*2枚目のペーパーを出してください。
問2.ブタさんは、どのような格好をしてお買い物に出かけましたか。1番上のお部屋から選んで○をつけてください。
問3.『もぐもぐレストラン』はどれですか。上から2番目のお部屋から選んで○をつけてください。
問4.ブタさんが買い物から帰ってきたときに、買い物かごには何が入っていましたか。上から3番目のお部屋から選んで○をつけてください。
問5.下から2番目のお部屋を見てください。レストランで1番はじめに並んだ動物に○、最後に並んだ動物に△をつけてください。
問6.ブタさんが作った新しい料理は何ですか。1番下のお部屋から選んで○をつけてください。
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2 お話づくりについては、4枚の絵カードを使って行うのが一般的でしたが、最近では3場面・2場面・1場面というように、使う絵カードの数が減っている
話す力を問うお話づくりは、ペーパー問題出題校では、あまり出題されません。その意味で、出題される学校は特定できますが、行動観察の中でコミュニケーション能力は常に求められていますので、受験生は「話す力」は相当高めておかなければなりません。昔は、4場面の絵を時系列の沿ってならべ、それを使ってまとまったお話を作る問題がほとんどでした。しかし、最近では、3場面であったり、2場面であったり、使う絵の数が減っています。原因と結果を考えて話を作ったり、人の表情の変化を読み取って、まとまった話を作ったりと、少しずつ変化しています。次のような問題はその典型です。
○ お話づくり(白百合学園小学校)
・この絵を見てください。花子さんはどうして泣いているのですか。また、泣いていた花子さんはどうして笑ったのですか。お話を作ってください。
○ お話づくり(学習院初等科)
・左の絵から右の絵にお話が進みます。真ん中の「?」の部分に入る絵も考えながらお話を作ってください。上ができたら下もやってください。
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3 言葉の理解に関しては「一音一文字」の考え方につながる内容がほとんどであるが、それを応用した「しりとり」も、いろいろ問題が工夫されている
言葉の理解に関する問題は、日本語の基礎である「一音一文字」に関する問題がたくさん出されています。
A)いくつの音でできているか
B)どこに何の音がつくか
C)最初は何の音か
D)最後は何の音か
などが基本となりますが、それを応用した典型的な問題が「しりとり」です。例えば、次のような問題です。ここには、「しりとり」のルールの理解に関するすべてのタイプが凝縮しています。
○ しりとり(雙葉小学校)
・左上の(れい)のお部屋を見てください。
リンゴ −ゴリラと、しりとりでつながるものはラッパなので、右のラッパの絵に星のマークがついています。同じように他の並んでいる3つのお部屋が、しりとりでつながるには、空いている?のお部屋に何を入れたらよいですか。お部屋の下についている印と同じ印を右の絵につけてください。
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言葉遊びとしての「しりとり」は、後ろに繋げていく遊びですが、しりとりのルールの理解が問題の正面に据えられると、かなり難しい問題に発展していきます。空欄を埋めたり、枝分かれしていくもののどちらを選択すれば長く繋がるか、といった問題が工夫され、その結果「逆しりとり」や「頭とり」といった難しい問題に発展していきます。その上、最近では、ことばの最後を音でつなぐだけでなく、下から二番目の音で繋いだり、真ん中の音で繋いだりする「ことばつなぎ」の問題も出始めています。しりとりと混同しやすい問題ですが、その典型的な問題が、次のような問題です。
○ ことばつなぎ(聖心女子学院初等科)
左のお部屋を見てください。まず練習をしてみましょう。ここにかいてあるものの名前の最後から2番目の音ではじまる言葉を探しましょう。エンピツの最後から2番目は「ぴ」ですね。「ぴ」から始まる言葉はピアノなので、エンピツとピアノを線結びしてください。次にピアノの最後から2番目は「あ」なので、アヒルと線結び……というようにつなげていきます。
・右のお部屋にあるものを今練習したお約束で、できるだけ長くつないで、青で線結びしてください。はじまりはわかりません。使わないものもあります。 |
4 動詞の理解に関しても、問題が増えている
言葉の理解に関する問題は「しりとり」に代表されるように名詞が中心ですが、最近では「動詞の理解」に関する問題も増えています。とくに「同音異義語」が多く、次のような問題がその典型です。動詞に関しては、生活の中で沢山の言葉を使って身につけることが大事です。ペーパー問題だけの学習では限界があります。具体的には、次のような形式で問われています。
○ 動詞の理解(聖心女子学院初等科)
・ここにあるものの中で「あげる」というものはどれですか。青い○をつけてください。
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以上、言語領域の問題を4つの視点で分析しましたが、やはり、問題の中心は「話の内容理解」です。毎日の読み聞かせが、一番効果的ですので入試直前まで毎日実行してください。
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