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家庭学習を中心に、受験対策を行っているため、集団での「行動観察」のような経験ができていません。家庭でできる「行動観察」の対策についてアドバイスしてください。 |
久野泰可先生からの回答
昔は、限られた女子校のみで行われていた「行動観察」が、今や、ほとんどの学校で行われるようになりました。では、なぜ小学校入試において独特の「行動観察」が行われるのでしょうか。昔は「自由遊び」が基本でしたが、最近は学校によって内容や方法が違っています。それは評価したい観点が多少なりとも違うからでしょう。しかし、この行動観察を行う学校側の目的は、大きな点で共通しています。
1. 何よりも学校側が見たいのは、入学後の「集団生活」を問題なく送ることができるかどうかという点である
2. 子どもの健全な発達を知るためには、学力試験だけでは不十分である
3. 子どもが育ってきた背景・家庭の考え方を知るには、行動観察が最適である
4. 入学後の成長にとって、物事への取り組み方の違いは大きな意味を持つ
5. 自主性・友達との関わり・自己表現力・コミュニケーション能力は、学力を伸ばす原動力となり、知識をどれだけ身につけているかよりはるかに大事な点である
6. 小1プロブレムに代表される、問題行動につながるような芽を早くから摘み取っておきたい
以上のような観点で行われているはずです。ある学校の校長先生が私に「遊べない子は伸びないんですよ」と話されたように、学校側も年長の11月時点の学力よりも、入学後に伸びていく学力のレディネスとして、モノや人にどのように関わり、どのように問題を解決していくのかを大切にしているように思われます。
こうした意図で行われる行動観察の対策として一番してはいけないことは「形を教え込む」ことです。場面を想定し「こういう場合にはこうしなさい」「これを聞かれたらこう答えなさい」と形を教え込むことが頻繁に行われていますが、これは学校側の意図とは全く正反対な指導を行っていることになります。
教え込まれた子どもの態度は、学校側にはすぐに分かります。形式だけ教え込まれた行動や発言は、時に異常にさえ映り、子どもが何人か集まればすぐに見抜かれます。入試向けにトレーニングされ「形式のみ」を身につけてきた態度は、将来の成長を促すどころか、まともな成長を阻害さえします。学校側が求めているのは、そうした教え込まれた形式ではありません。
こうした対策が行われるのは、そもそも「なぜ行動観察が行われているのか」、学校側の意図を正しく理解していないからです。はっきり言いましょう。行動観察では、何ができたかできないかを評価の中心にしているのではありません。
ものごとに取り組む姿勢や子ども同士の関わりは、「できた―できない」という視点で判断するのではなく、どのよう関わったかという点において評価されるのです。
そこで求められているのは、どのような考え方で育てられ、どのような人との関わりを経験し、他者に対してどのような気持ちや態度が示されるか・・・・総じて、年齢にふさわしい成長を遂げているかどうかです。つまり、子育ての総決算として、ものごとに取り組む態度や、子ども同士の関わり方が評価されているのです。
そうした観点で、子どもたちの集団活動を眺めた時、あまり好ましくない行動様式・改善しなくてはならない他者への対応を身につけてしまっている子どもがよく見られます。そうした行動を起こさないということが、家庭でできる行動観察の対策視点になるかもしれません。
@ 他人の存在を無視し、自己主張ばかりする
A 教師の指示や、友達の話がうまく聞けない
B 友達との相談に加われない
C 協力して何かを作り上げるということができない
D 自由遊びの時、友達と遊べない
E 自ら積極的にコミュニケーションが取れない
F 一つのことに集中できなく、目先が変わる
G 譲り合いができない
こうした態度は、家庭生活のいたるところで見られるはずです。その時点で改善しなければ、教室に来た時だけ「形式」を叩き込まれても、どこかでそのメッキは見抜かれます。
望ましい態度の育成は、子ども同士の関わりを沢山経験して身につけていくものばかりです。ですから、集団でのこうした経験ができない場合は、できるだけ意図的に、集団活動(遊び)の場を探してあげることです。
行動観察の対策は教室に通わせるだけでなく、普段の生活の中で、身につけていくものばかりですから、日常のちょっとした工夫で経験できるものが多いはずです。
他者との関わりなどは、経験を通して学んでいくべきことですので、時間をかけて沢山の経験を積むことです。
私たちは、形を教え込む行動観察対策ではなく、経験値を高めるための行動観察の講座を通し、どれだけ多くの子どもたちが、望ましい方向に変化していったか・・・たくさんの事例を見てきました。子どもは変わります。それは、家庭での固定化した人間関係ではなく、子ども同士の関わりの中で変化・成長していくのです。
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