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小学校受験新聞TOPこぐま会 久野先生に聞いてみよう!2012>第9回

こぐま会代表 久野泰可先生に聞いてみよう! 2012


第9回

掲載 2012年9月10日

入試本番まで残り少なくなりましたが、これから入試まで、どんなことに気をつけて学習対策をとればよいのでしょうか。

 

 

 久野泰可先生からの回答

  

 

入試にとって最大のヤマ場といわれる夏休みも、あっという間に過ぎて、計画していたものの7割もできず、焦りを感じているご家庭も多いかと思います。しかし、多くの過去問や難しい問題に挑戦してきた子どもの頑張りを評価してあげて、残り少ない時間を有効に使ってください。
40年間の現場指導を通じ、いつも感じることですが、9月〜10月の過ごし方が、合否に大きく影響しています。勉強の量を増やすという意味ではなく、入試本番までの心のコンディション作りが、とても大事だということです。
子どもらしい明るさを忘れず、自信を持って本試験を迎えるためにどんな工夫をしたらよいのか。逆にいえば、これから本試験までの過ごし方を誤ると、せっかく力がありながら、合格できないという結果になってしまいます。その多くの原因が、焦りを感じた母親の、子どもに対する接し方にあります。親の焦る気持ちを極力抑え、過度な要求をしないようにすることです。
恐い先生役を止めて、子どもの立場に立って、一番良い心の状態で試験を迎えられるよう、良好な母子関係を作らなくてはなりません。その前提の上で、学習面で工夫すべきことを、これまでの経験を踏まえてお伝えします。

 

(A)まず、夏休みに頑張った反動で、勉強に興味をなくしたり、意気込みが以前と違ったり、自信をなくして勉強から逃げようとしたりしていませんか。こんな場合は、少し工夫が必要です。勉強から離れることではなく、ペーパー中心の勉強の仕方を変えたり、体を使って学習したり、子どもを先生役に仕立てたり・・・・学びに新鮮なものを取り入れてみてください。新鮮なものに対して興味を示せば、またペーパーに戻っても頑張れます。
夏休みはかなり難しい問題をたくさんやってきたと思いますが、難しい問題に挑戦した結果、仮にその問題ができなかったとしても、その頑張りが基礎をしっかり固めたことになっているはずです。これからは少し基本的な問題に戻りながら、本当に理解しているかどうかを点検してください。どこまで理解できたか、どこから理解できなくなっているのかをしっかり分析し、あと少しで正解のところにいる子どもたちを、正解できるまで引き上げてください。たくさんの量のペーパーをやるのではなく、1回8枚ぐらいのペーパーを30分ほどかけてテスト形式で行うのがよいでしょう。実際の試験に近い枚数でやること、30分間ともかく集中できる態度を身につけること・・・そうした実践的な学習法が効果的です。

 

(B)基礎に戻るというのは、決して易しい問題をもう1回やりなさいということではありません。難しい問題を当てはめながら、本当に理解しているのかどうかを確認することです。
基本的な理解ができているかどうかは、そうした少し難しいとされる問題にぶつかることを通して、はっきりしてきます。ある程度、学習が進んだ子は、易しい問題よりも少し難しい問題の方が意欲的に取り組みます。それが、子どもにとって適度な刺激になるからでしょう。「基本に戻れ」ということは、どんなレベルの問題に取り組むとしても、その問題の基本的な理解ができているかどうかをしっかり把握してほしいということです。それが必要なのは、解き方だけを理解し、本質的な理解をしていない子どもが多いからです。本当に理解していないと、形の変わった新出問題には対応できません

 

(C)この時期になって、問題の中身が理解できない子どもはほとんどいないはずです。しかし、模擬テストをすると、できる子どもとできない子どもに分かれるのはなぜでしょう。
多くの場合、問題の聞き取りが1回で正確にできるかどうかということに起因しています。もちろん難しい言い回しや、記憶の要素を沢山含んだ設問もありますが、もう一つ気をつけなくてはならないのは、これまでいろいろなタイプの問題をやってきたばかりに、問題の意図を勝手に理解してしまう「思い込み」での間違いです。
例えば、簡単な問題をかえって難しく考えてしまったり、最後まで設問を聞きとらず、自分勝手に理解してしまうケースです。とくに、難しい問題であればある程、ご家庭で繰り返し練習してきているはずなので、解き方を身につけてしまい、易しい問題もその難しいやり方でやってしまって間違えるというケースが目立ちます。
観覧車や、数のやりとり、交換のような問題に目立ちます。この時期になって、もう一度基本に戻るのは、こうした混乱をここできちんと整理するという意味があるからです。

 

(D)志望する学校の過去問は、相当練習されたと思います。しかし、全く同じ問題が出題されるわけではありませんから、どんな問題が出題されてもよいように「考え方の基本」を身につけてきたことと思います。その上で、ぜひ取り組んでいただきたいのは、他校で出された同じ趣旨の問題です。考え方がしっかり身についたかどうかは、違った問題をやらせればすぐに分かります。解き方ではなく考え方を身につけなくてはならないのは、初めての問題に対処できる力を身につけなくてはならないからです。また最近は、その学校で過去一度も出されなかった問題が出題されたりしますが、そのほとんどは過去においてどこかの学校で出題されている問題です。ある学校で出題された新しい形の問題が、すぐ他校に波及するという傾向が見られますので、ぜひ時間にゆとりがあれば他校の問題にもあたってください。とくに雙葉小学校の問題と、筑波大学附属小学校小の問題は、受験する・しないに関係なく、挑戦してみてください。この2校は、小学校入試における新しい問題作りをリードしている学校ですから「どこまで難しい問題をやっておけばよいか」に対する答えになると思います。

 

(E)ここ2〜3年の間に、各学校とも工夫された良問を出題しています。それは、繰り返しの機械的なトレーニングで身につけた「解く技術」ではなく、これからの教科学習に必要な「考える力」を必要とする問題です。
子どもが設問を聞かなくても見ただけで分かってしまう問題ではなく、しっかりと指示を聞き、問題の意図を理解しないとできないような、いわば子どもにとっての新出課題です。求められている思考力は同じでも、形を変えることによって、子どもにとって初めての問題に仕立てあげてしまうのです。限られた枚数のペーパー問題で子どもの真の学力を問うわけですから、当然なことです。そのために必要な対策は、自ら問題の解き方を説明できるまで、理解力を高めておくことです。とくに最近よく出題される「交換」や「数のやりとり」「つりあい」「観覧車」等の問題は、答えの導き方まで子どもに説明させることです。
ペーパー問題で丸がもらえたからと安心してしまわないで、どのように考えて答えがでたかを説明させることです。本当は分かっていないにもかかわらず、丸がもらえたということはよくあることですから・・・。その説明の過程で、本当に理解できているかどうか、またどこで間違えているかどうかがよくつかめるはずです。

 

以上思いつくままに学習面での工夫の仕方を述べましたので参考にしてください。今は、願書提出に向け、ご両親が一番忙しい時ですが、生活のリズムを変えないで、学習時間をしっかり確保してください。

本試験まで、これまでの生活のリズムを崩さず過ごすことが大切です。
勉強量を減らすことも、増やすこともよくありません。規則正しい生活を送れるかどうか、そこに子どもの心の安定が保証されるのです。体の健康と心の健康が保たれてこそ、一番良いコンディションで試験を迎えられるわけですから、親の責任においていろいろ工夫してあげてください。

 

         

 

 

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