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最近の入試問題は、かなり工夫された問題が多く、訓練によって解決するというより、「考える力」をどう身につけるかが大切だと聞きます。どんな点に気をつけて、これからの家庭学習を進めたらよいでしょうか。
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久野泰可先生からの回答
秋の受験まで、残すところ半年足らずとなりました。受験生にとって最大の山場を迎える夏休みに入るまでに、どんなことに気をつけて家庭学習を進めたら良いか、これまでの経験を踏まえ、お伝えします。
これまで、長い方で1年半以上、短くても半年間あまり、受験対策として家庭学習に取り組んでこられたと思います。一般論で言えば、現段階で基礎はしっかり固まり、いわゆる過去問も学習対象にできる時期になりました。
最近は、見たこともない新しい問題、考える力が求められる工夫された難しい問題が増えました。とはいえ、入試問題の6割ぐらいは基礎的な問題です。その意味で、まず基礎をしっかり固め、点が取れる問題は落とさないことが必要です。半年以上学習に取り組んできた子どもにとっては、自信持って、基礎的な過去問に取り組み可能な時期になりました。また、子どもたちの学習意欲を高めるためにも、少し難しいと思われる課題を与えるのも学習の動機づけになるはずです。
しかし、大きな問題があります。それは、これまでどんな方法で基礎固めの学習を進めてきたかということです。
最初からペーパーのみを使った過去問トレーニングを中心に進めてきた子どもにとっては、難しい問題に取り組み始めるこの時期に大きな壁を感じるはずです。具体物を使い、物事に働きかけ、試行錯誤して自分の力で問題を解く経験のない子ども、解き方のみを訓練して身につけてきた子どもは、工夫された入試レベルの問題には対応できません。なぜなら、最近の入試問題の多くが、今まで見たこともない、まったく新しい問題ばかりだからです。
問題の意図を一回で理解し、自分の力で解き方を工夫し、一度ある答えを導き出し、その答えに基づいて、また別な思考操作をするといった、「複合化された問題」は、訓練のみの教え込みでは決して解けません。基礎学力が身についているかどうかは、そうした工夫された問題にぶつかった時にはっきり分かります。
こぐま会で発刊している「ひとりでとっくシリーズ」100冊をやっても、まだ解けない問題がある・・・・それは、「自分で考える力」が身についていないからです。
ペーパー主義の学習がいけないのは、教える側も子どもも、「出来た―出来ない」で結果を判断し、どのように考えて答えに到達したかを確認しないまま、次の問題に進んでしまうからです。丸がもらえても、もらえなくても、子どもの思考プロセスを点検してあげることが大事です。
具体物に触れ、試行錯誤することが好ましいのは、子どもの認識能力はそのようにしてしか身についていかないという事が、心理学者の様々な思考実験によって、証明されているからです。
受験のための教育といえども、そうした教育の原則を踏み外したところで成り立つものではありません。
過去問に相当前から取り組んでいる方も多いと思いますが、今一度、子どもの学力を疑ってみてください。
本当に理解してできたのか、たまたま教えた方法を使ってできたのか
その違いは、入試本番で出題される初めて取り組む問題をやる時にはっきりします。具体から抽象への橋渡しは、事物を媒介としなければ決してできるものではありません。始まりと中間をカットし、最後の段階で行うべきワークブックのトレーニングのみを繰り返しても、「考える力」は決して身につきません。
本来ならば、これからの時期はペーパーを多用して学習を進めていくべき時期ですか、これまでペーペートレーニングのみの学習をしてきた場合には、ぜひ具体物操作をさせ、物事に働きかける経験を積ませることを通して、理解度を点検し、さらに「考える力」を深めるようにしてください。具体物に戻る勇気が、大人の側に必要です。
最近の学力試験の特徴をまとめると
@ペーパーの枚数が減り、ひとつひとつがかなり工夫された、子どもにとって初めての問題が多いこと
A繰り返しのトレーニングで身につく単純な問題が減り、「考える力」が求められ、作業を通して答えを導き出す応用問題が多いこと
B一つの問題の解決に、多様な考え方が求められる「複合問題」が増えたこと
こうした問題に対処できる学力を養うために、どれだけ沢山のペーパーをこなしたかでなく、どれだけ深く理解したかに重点を置き、一枚一枚のペーパーを大切に行ってください。答えの根拠を説明させたり、同じペーパーを使って逆の質問をしてあげたり・・ちょっとした工夫で効果ある家庭学習が進められるはずです。
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