成蹊小学校 金納 善明 校長先生 インタビュー
毎年多くの方が受験する成蹊小学校は、教育目標に“ゆとりある学校生活の中で個性的な子どもを育てる”を掲げています。具体的にはどのような特徴があり、どのような教育を行っているのか、金納善明校長先生にお話を伺って参りました。取材 平成20年6月
|
金納校長先生がお考えになる成蹊小学校の学習面の特徴はどんなことでしょうか?最初の特徴は、他の学校にはない「こみち」という科目を持っていることではないでしょうか。6年間「こみち」を学んでいきます。 |
この「こみち」の授業が児童の将来どのように活きてくるのかですが、成蹊小学校は伝統的に日記指導にも力を注いでいます。「こみち」の授業が書くこととも繋がっています。学習を記録する、そして他者が理解できるように表現する、体験したことを表現して伝える、そうした活動は中・高で必ず活きてきます。
2つめの特徴は、創立者の中村春二は、最終的に子どもたちが自分で学び、自分で修めるようにならなければ成蹊小学校を作る意味がないとまで言っています。1年から6年まで、自分の学びとして理解させる指導方針が成蹊小学校の特徴だと思います。そのことが「こみち」にも活きているわけです。
児童は、“自学ノート”というものを持っています。自分が学習してきたことを先生に見てもらいます。何を学習してくるかは児童の自由です。これは宿題とは違います。自分でテーマを見つけてやる。昔は“自学の時間”という時間がカリキュラムにあったのですが、今はこのご時世ですのでありませんから、家庭でやってくるわけです。
3つめの特徴は、1年生から専科制の授業を持っていることですね。音楽、体育、美術、英語などです。専門教員による質の高い授業を行っています。
この3つの学習の特徴とは別に、1クラス28人編成の少人数教育を行っています。
これは教科に限らず、教科も、行事も、学級経営も全部含めた生活の中ので少人数教育を行っています。
すべてを見ていくためには少人数教育が良いと考えて行っているわけで、教科学習だけのことを考えて少人数教育を行っているわけではありません。
創立者の考えでもあります、児童一人ひとりをよく見るという観点で行っています。
一つ一つの課題について丁寧に指導できるという面がメリットとしてあげられます。
まず、「夏の学校」があげられると思います。
1年〜6年まで、段々と宿泊日数を増やしていきます。1年生は2泊3日、6年生になると5泊6日になります。
「夏の学校」には、
登山や遠泳など、どの学年も必ず子どもたちがチャレンジする場というのを設けています。
6年生は岩井で1500mの遠泳を行います。
医師団、水泳師範団含めて約80名のOBが協力して下さいます。「夏の学校」など、成蹊の行事を支えてくれているのはOBの力です。
2つめは、各学期ごとにメインの行事を設置しています。
自分たちの成長を確かめる場を作っています。例えば、1学期は運動会、2学期は文化祭、3学期はマラソン大会などです。
それぞれ、2週間前から準備を始めるのですが、それまでは出来なかったことが、友だちと協力して完成させる。そして保護者の前で発表して拍手をもらうまでに仕上げていく。そういう経験をさせることにこちらの狙いがあります。“自学自習”にも繋がっています。
行事の中で君たちは成長するのだ、と教師は児童に伝えています。
自分を試す場、発表する場を設けてあげることが、子供たちに成長の自覚を持たせる、自信をつけさせてあげることになります。それが“行事教育”であると考えています。
これは全体的に言えることなのですが、「一貫教育」ということが言えると思います。
併設校に進学できることだけが一貫教育ではなく、併設校のお兄さんお姉さんが下におりてきて指導やアドバイスを行う、こんなことも一貫教育の形なのです。5・6年のクラブ活動では、同じキャンパスにある大学生が手伝いに来てくれたりします。他にも色々な形で、併設校の生徒たちが協力してくれています。同じキャンパスに、小中高大を持っている成蹊ならでは利点と言って良いと思います。
子供たちの居場所は教室だけではないという考え方で設計しています。
教室と同じ広さのワークスペースと、ベランダがあります。ベランダは学年で繋がっていますので、文化祭の準備をしたり理科の学習をしたりと、教室の3倍のスペースを児童たちは持っているわけです。
材質は木材を多く使っており、ぬくもりのある校舎になっています。
ソファーや、階段に座って本が読める空間もありますし、多様な学習が行える環境を設けています。
併設校への進学状況ですが、成蹊中学校には殆どが進学しますが、他校を受験する児童が5,6名います。医師を目指す児童などのようです。
成蹊小学校卒業生のうち約3割が大学に進学しています。
入学試験についてですが、
丁寧にこちらの話を聞いてくれる子、よく聞き取ることが出来る子、これが一番望ましいと考えています。
相手が何を言おうとしているのか、聞いて理解することは、毎日親がしつけていないとできません。簡単に身につくことではありません。
よく聞きとるということは財産です。将来的に絶対に伸びます。
自分の心に取り込むことが出来る子が欲しいです。
成蹊小の入試は、例題をやらせています。逆に言うと解き方を教えているわけです。
はい次、はい次と機械的に行っていくテストではありません。
こうです、こういうことですね、と丁寧に説明してからやらせる方式をとっていますので、聞いている子と聞いていない子が分かります。
子どもに失敗体験を得させまいとしたことが、実は失敗体験を増幅させてしまっていると言えると思います。
また、子どもが失敗した時に、上からああでもないこうでもないと言うのではなくて、学習している時に親御さんが失敗して見せて下さい。お子さんが、その失敗に気付き得意になって「お母さんここは違うよ、こうなんだよ」と言わせることが出来たら、理解が深まっていくじゃないですか。
“失敗は成功のもと”とは逆に“成功は失敗のもと”にもなるのですよ、と言いたいです。
平常心で学習に臨んで下さい。
成蹊小学校 新校舎イメージ
トップへ