第18回
秋の受験に向けた学習対策にとって、最大の山場になる「夏休み」を控え、どのご家庭でも「夏の学習計画」を立てられたことと思います。
この夏をどれだけ有効に過ごすかが、合否に結びつくと言っても過言ではありませんが、頑張れば頑張るほど合格に近づくかというと、必ずしもそうではありません。そこが難しいところです。子どもが意欲を持続できるような学習をしないと、9月10月の一番大事な時期に夏の頑張りの反動で、学習を拒絶する子どもたちが増え、集中力をなくす子が出てきます。その意味で、夏の学習のかじ取りは大変重要なのです。
夏の学習を効果的に行うためには、最後の9月・10月の子どもの様子も視野に入れて、計画を立てなければなりません。一番いけないのは、夏が勝負どころと考え、勉強漬けの毎日にしてしまう場合です。保護者の方が試験を受けるのではありません。自分の意思で学習計画を立て、実行するならまだしも、親の立てた計画に沿って頑張るのは子どもたちですから、ある限度を超えてしまうと、受け入れられなくなってしまうのは当然なことです。それぞれの子が頑張ることができる範囲は、これまでの様子を踏まえれば自ずと分かることですが、その範囲を超えて、他人の真似をしても、かえってマイナス効果です。
では、どんな点に気をつけてこの夏を乗り切ればよいのか。40年間の指導を振り返って、留意していただきたい点を列挙しますので、参考にしてください
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夏の学習は、三つの目的があります。それは、「基礎学力をもう一度徹底してチェックすること」。「難しい過去問・予想される難問にも挑戦すること」。そして、「自分で物事を解決する、自立した思考力・自立した行動力を身につけること」・・・この3点です。
A
子どもが一つのことに集中できる時間は、30分が限度であることを踏まえ、長い時間同じ学習を続けないこと。たとえば、ペーパー学習を1時間も2時間もやらないことです。目先を変え、課題を変えれば、結果的に長時間の取り組みは可能ですが、一つのことを長くやり過ぎても効果はありません。
B
ペーパー学習は、枚数をたくさん行えばよいわけではありません。一枚一枚を大事にした学習を心掛けてください。
C
一度に行うペーパー問題は、6〜7枚をセットにし、実際の試験に合わせてテスト形式で行うことが大事です。
D
ペーパー問題だけの学習をこれまで続けてきた場合は、時間のある夏にこそ、具体物やカードを使い、考え方の根拠をしっかり説明できるようにしてください。
E
模擬テストは、入試の実態を反映したものを受けることが大事です。極端に難しすぎたり、入試傾向を反映しない、模擬試験は受けても意味はありません。また、中学入試や高校入試と全く違う小学校入試は、学力の偏差値だけで合否の判定がなされているのではないことをよく知っておいてください。実力主義ですが、学力主義ではない点が、ほかの入試と全く違う点です。
F
模擬テストの結果が悪いことを理由に勧誘された講座に参加した結果、これまでの指導法と違い、混乱を起こす子どもたちが毎年出てきます。これまでの学習方針を乱すような講座には参加せず、今までの学習を生かす意味で、同じ方針で家庭での復習を徹底することが大事です。
G
勉強漬けの夏の生活では、必ずその反動が9月・10月に出ます。夏の学習は、時間的に見ても、これまでに比べ、密度の高い学習ができますが、9月〜10月に子どもたちがどのように関心を持ち、意欲を継続できるかを考えて行ってください。一番良い状態で入試が迎えられるよう、子どもたちの受け止め方をシュミレーションし、夏が終わったとたんに息切れしてしまうような、夏の過ごし方だけは、避けてください。そのためには、メリハリのある生活を目指し、「よく遊び・よく学べ」を実行してください。年長の子どもらしい、夏休みを送ることが、行動観察の対策にもつながっていくのです。
H
お泊り保育や、合宿等、年長クラスは、様々な行事が組まれていると思いますが、自立心を身につけるためにも、積極的に参加してください。
I毎日の生活や学習の中で、がんばる目標を一緒に立て、目標に向かって頑張り、その達成感を味わう経験をたくさん持たせてください。
J
ラジオ体操と絵日記は、生活のリズムを作るだけでなく、入試対策にとっても意味のある夏の経験ですから、ぜひ、実行してください。
K
今、この時期になっても、解決していないことが多い課題を、領域ごとに列挙しますので、必ずこの夏に確認してください。
A)未測量 シーソー・つりあい・ことばによる関係推理
B)位置表象 四方からの観察・地図上の移動・回転位置移動
C)数 数のやりとり・一対多対応・交換・数の増減の複合問題
D)図形 対称図形・重ね図形・回転図形
E)言語 長い話の内容理解・一音一文字の応用
F)推理 魔法の箱・観覧車(回転推理)
模擬テスト等で、成績の振るわない子であればある程、この夏は基礎を徹底してください。入試問題の8割は、基礎的な内容から出題されます。ただ入試問題は、同じ趣旨の問題でも、子どもたちにとっては、今までに見たこともない問題になることが多いのです。それだけ学校側は、パターン練習で解けてしまうような問題を出題しないということです。ここをよく受け止め、一日何十枚もペーパーをこなすだけの学習では、今の入試に対応できないということだけは、しっかり理解しておいてください。
最後に、こぐま会の卒業生が残していってくれた、「合格者からのアドバイス」の中から、夏の過ごし方に触れたアドバイスを、二つだけご紹介させていただきます。
(A)
夏休み中は、親の身勝手な不安から、ペーパーを重点的に行いました。午前、午後2時間ずつペーパー重視でやってしまいました。休み明けのテストは下がっておりました。本人の前向きのやる気も失われたように感じられました。先生のご忠告を思い出し、ペーパー20〜30分の後は、工作やお絵描き、体操を取り入れ、メリハリのある学習にいたしました。すると再び以前のテスト結果に戻ってまいりました。本人も20〜30分のペーパーの時は、「これほど、集中する子だったかしら」と親が思うほど集中しましたので、声がけをし、さらに集中する環境をつくりました。
(B)
なぜそうなるのか、理由を説明することを大切にしました。根気が要りますが、夏休み明けには論理的思考力も高まり、こちらが聞かずとも、上手に理論立てて説明していたりするようになりました。言語力も確実に伸びていきます。普段の生活でもやや理屈っぽくなりますが・・・・。また分からない時は、極力怒らずに、集中しない、人の話を聞かない、「こんなの簡単」と自慢げな態度をとった時などに注意しました。夏休みは毎日外遊びをしていました。弟もおりますので、お勉強だけに偏らず、子どもらしい生活を大切にしました。夏季講習では、1〜2週目に早朝プラスお弁当持ちクラス、そして指定校とペーパーを全て終わらせてしまい「やった」という達成感から後半はかどらなかったので、コンスタントに取るべきだったと反省しました。9月半ばまでモチベーションが上がりませんでした。基礎的なものをスピードトレーニングしたり、毎日トレーニングで総復習をしました。気分転換に一緒にあるいは娘一人で料理を作る時間を持ち、そのエピソードは願書や面接の時に役立ちました。
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