第15回
教科書のない唯一の入試である小学校受験で、問題を作る学校側は、何を根拠に問題を作っているのでしょうか。現場指導に携わってきた41年間を振り返り、出題された問題の流れをみると、大きく4つの時代がありました。それは、
1 知能テストの問題を入試問題に使用していた時代
2 志願者の増加に伴い、知能テストのようなパターン化した問題では、差がつかなくなり、小学校低学年の内容をもとに、大量のペーパー問題(多い学校で30枚)を出していた時代
3 過熱した準備教育の弊害を指摘する専門家の意見を受け入れ、ペーパーを使わず、具体物やカードを使って個別テストや、小集団での試験を行っていた時代
4 少数のペーパー問題と、行動観察と面接の3本柱を基本とした現在の入試
受験者数の増加や減少によって、入試の形式そのものが変わってきたという側面もあるかもしれません。こうした流れをみると、現在の入試の内容や方法が、幼児期のまともな教育を前提としていて、特殊な訓練によってでは解決しないという側面を持っている分、以前と比べると「正常化された入試」と言えます。ペーパー問題を一日に何十枚と行わなければ合格できないという時代は、上記2の時代に確かにありましたが、それはもう過ぎ去った過去のことであり、今や、学校側の問題作りは、訓練によってだけでは解決できない「考える力」を求める問題に変化しています。
こうした時代にあって、学校側も問題作りには、相当気を使っているはずです。易しすぎても難しすぎてもいけなく、易しい問題と難しい問題をどのように組み合わせて、平均点を70〜75点ぐらいの試験内容にすればよいのかを考えているはずです。
パターン化した問題ではなく、子どもの「考える力」を見るために、どんな問題を出題したらよいのか・・・・そうした目で見ると、他校で出題された問題が気になることもうなずけます。だからこそ、ある学校で出題された「考える力」を問う新しい問題が、他校に波及していくのでしょう。私は、出題された問題を、何十年もの間、幼児期の基礎教育の観点で分析してきましたが、最近では類似した問題が多くの学校で同時に出題されていることに気づいています。
その中の多くは、私たちが「ひとりでとっくん」シリーズの100冊の中で、子どもたちに与えてきた問題ですが、その問題を学校ごとにいろいろ工夫し、まったく新しい形の問題に変えて出題しています。そして、ある学校で出題された新しい問題の意図が、次々に他校に波及していくのです。同じ問題は一つとしてありませんが、「どんな能力を求めているか」という点で一致した問題が、新しい傾向の問題を形成しているのです。
こうした流れを読み取って有効な対策を立てないといけません。ひとつひとつの問題は、昔からあった問題ではありますが、それが形を変え、他の領域の問題と複合化され、新しい傾向の問題として成り立っていく背景には、本当に身についた「学力」を見ようとしている学校側の姿勢が読み取れます。
子ども自身に答えに至るプロセスを考えさせるような学習を積み上げていかないと、こうした新傾向の問題に有効に対応することはできません。
まず、しっかりと入試問題を分析すること。その問題を通して学校側がどんな能力を求めているのかを知ることができれば、今後問題がどう発展し、どんな新しい問題が出題されるのか予想できるはずです。その予想の上で、一枚一枚のペーパーを丁寧に深くやりこむことが、大量のペーパー問題を機械的な訓練で解かせるような方法とは違う、今の時代にあった新しい受験対策法なのです。
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