第14回
入試まで、残すところ半年足らずとなりました。
模擬テストの結果を見て、一喜一憂しているのではないかと思います。月齢が低く、ここにきてやっと成績が伸びている子がいる一方で、これまでよくできていたのに、成績が伸びず自信を失いかけている子も大勢見受けられます。
入試までの間には、山あり谷ありですから、数値化された結果はあまり気にしない方がよいと思いますが、何が理解できていて、何が理解できていないのかをしっかり確認しておく必要はあります。基礎段階の学習内容と違い、応用段階の学習内容や実際の入試問題は、いろいろな要素が複合されて一つの問題を構成しているため、子どもたちにとって難しいのは当然です。こうした複合化された問題をこれから沢山やっていかなければなりませんが、やはり何といっても、「基礎がしっかりできているか」どうかが常に問われます。そのためにも、過去問トレーニングに入る前に、もう一度基本をしっかり確認し、練習してください。
これから夏までの2〜3ヶ月は、子どもたちも自信を身につけ、学習に一番興味を持つ時期です。また、学力も一番伸びる時期でもあります。取り組む課題は、難しくなりますが、それでも子どもたちはこれまで学んだものの見方・考え方を応用して取り組みます。ちょっと背伸びしないと解けない問題に取り組ませることによって、学力の底上げが可能となります。
同じレベルの問題を繰り返しても、学力の進展は望めません。ちょっと背伸びして頑張らなくてはならない問題に取り組ませることが、一番教育的であるのです。ただし、明らかに手のとどかない、5歩も6歩も先の問題に取り組ませても、意味はありません。その意味で、どこまで解っていて,どこから分からなくなっているのかを大人側が知っておく必要があります。
こぐま会で出版している100冊の「ひとりでとっくん」シリーズは、この考え方を取り入れて作成したものです。すなわち、同じテーマでありながら、問題集の最初の5ページの問題と最後の5ページの問題とでは、まったく難易度が違います。難易度をつけたこの問題集こそ、一歩先の問題が何なのかを明確にしています。それを使って、子どもの現在の学力を知り、これから取り組む課題を明確にして学習することが、夏休みまでに行っておかなければならない課題です。
ペーパー学習だけを行ってきた子どもたちの多くは、まったく新しい課題に対して自分で取り組むことはできません。教え込まれた方法には限界があるからです。とくに最近の工夫された問題は、今後も様々な形に発展していく可能性があるため、子どもに伝えるべきことは、解き方ではなく「考え方」です。
子ども自身に問題に取り組ませ、どこまで分かっていて、どこで分からなくなっているのか。あるいは、なぜ間違えたのかを掴んでおく必要があります。
答えが○か×かではなく、○に至る過程を注視しないと、本当の意味で、応用力のある力は身につきません。仮に×であったとしても、考えている方向性に間違いがなく、あと一歩進めば完璧な答えになるというところにきている子どもも実際には大勢います。
子どもの考えのプロセスに入り込んであげないと、子どもの努力が「×」一つで切り捨てられてしまい、あと一歩のところまで進んでいる子どもの考える力を台無しにしてしまうことになります。私たちが、必ず答えの根拠を言語化させるのは、どこまで分かっていて、どこから分わからなくなっているのかを知るには、一番良い方法だと考えているからです。
入試が間近になればなるほど、親(とくにお母さん)たちが焦ります。やらなくてはならない課題が多すぎて、整理がつかなくなってしまうことと、子どもの学力が思うように伸びず、こんなことで大丈夫かと心配してしまうからです。
焦った結果何をするかといえば、勉強時間を多くし、ペーペーの枚数を多くしていくのです。その結果、子どもの気持ちの中に、「もうやりたくない」という逃げ出したい気持ちが台頭し、一番重要な入試間近の9月・10月になってやる気をなくし、入試本番を一番良い精神状態で迎えられず、合格できないケースをたくさん見てきました。
これからやるべきことは、一枚でも多くのペーパーを機械的にこなすのではなく、一枚のペーパーをどこまで深く理解させるかということにこだわるべきです。100ある課題を100やるのではなく、100ある課題の基本となる10の課題を探し、それをどうやって理解させるのか。10の課題を、自分の力で解くことによって、残り90の課題は、解決可能という「転移する学力」の育成をめざすべきです。そのことによって、ゆとりが生まれ、親子(母子)関係も良好に保ちながら、入試まで歩み続ける事ができるのです。
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