第12回
11月から始めた受験対策も、早いもので、6ヶ月が過ぎようとしています。各領域の基礎学習も終え、これから難しい問題や、実際に出題された過去問に取り組むことになります。また、学習方法も、具体物中心であったこれまでの学習から、いよいよ最終段階である「ペーパーを使った」トレーニングに移っていくことになります。
これまで、ものごとに働きかけたり、試行錯誤して考えてきたその経験が、本当に生かせる段階に入ることになります。ペーパー学習だけを行ってきた子ども達とは違い、ものごとを論理的に考え、答えに至るプロセスを言葉で説明できるようになっていると思います。この力が身につけば、新出問題にも自信を持って取り組んでいくことはできるはずです。
残り半年となった今の時期の学習は、「基礎をもう一度確認すること」と、「過去問への取り組みを強化する」という2つの課題がありま。ただ、過去問対策と言っても、すべての問題に今すぐ取り組むことは困難ですので、取り組ませる課題の取捨選択が必要です。そのために、子どもに与える前に保護者がまず自分で解いて、難易度を確かめてから、子どもに与えてください。背伸びさせることは発達を促すことになりますので、教育的に意味はありますが、背伸びしても届かない、極端に難しい問題を与えれば、自信を無くしていくだけで、かえってマイナスです。
では、どうしたらよいか。過去問を同じレベルに並べるのではなく、過去問の中で、同じ趣旨の問題がどのように難しくなっていくかを、しっかり分析し、その分析の上で、問題の配列を考えることです。教科書があればともかく、小学校入試は「教科書」のない入試です。そこに間違った受験対策がはびこる原因があるのですが、そうであるならば、なおさら、過去問を過去問として一括りにするのではなく、その中味を徹底して分析することです。それが、受験生を取り巻く我々大人の責任です。夏休みまでの2〜3ヶ月間は、まさに基礎から応用への橋渡しをする大事な時期で、子ども達も一年中で一番集中し飛躍できる時期です。
では、取り組みの方法を具体的に、明らかにしてみましょう。例えば、ある学校で出題された「一対多対応」に関する問題は、4年間続けて次のようになって出題されています。
S校 2010年度
<置き換え・重さくらべ>
ポテトサラダを作ります。大きいジャガイモや小さいジャガイモが袋に入っています。これからジャガイモの皮を剥いてお鍋で茹でるのです。
左のお部屋を見てください。大きいジャガイモ1個は、小さいジャガイモ3個と同じ重さです。この中で1番重い袋に青い○をつけてください。
右のお部屋を見てください。右の袋を、左のジャガイモの入った袋と同じ重さにするには、小さいジャガイモがあといくつ必要でしょうか。袋の中にその数だけ青い○をかいてください。
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S校 2011年度
<一対多対応(つりあい)>
ここにあるブドウ1個はミカン4個と同じ重さです。
上と下で、同じ重さの果物が入っているお部屋どうしを、青で線結びしてください。
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S校 2012年度
<一対多対応の応用(交換・置き換え)>
左側の絵を見てください。絵本1冊と、鉛筆2本、消しゴム4個は、同じ値段です。
花子さんは絵本を2冊買いました。絵本2冊と同じ値段で買えるものが入っているカバンを、下から探して青い○をつけてください。
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S校 2013年度 <一対多対応と交換>
上のお部屋を見てください。●は○2個に換えられます。◎は●2個に換えられます。それぞれのお部屋にある印を全部○に換えると、○はいくつになりますか。その数だけ右のお部屋に青い○をかいてください。
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この中で一番難しいのは12年の問題です。ですから、必ずしも一番最近の問題が一番難しいわけではありませんが、それでも、だんだん難しくなってきていることは窺えます。このように、同じ学校で同じ趣旨の問題が出題された場合、それを分析し順序づけることによって、練習課題として、とてもよい教材に変わります。その問題の変化の中に、学校側の出題意図と、どこまで難しい問題に取り組んだらよいのかのメッセージが読み取れます。
また、いくつかの学校で出題された「飛び石移動」の問題も、学習順序を教えてくれる、よい問題として受け止める必要があります。それを、系統化したものがありますので、それをここに紹介してみましょう。
このように、同じ学校だけでなく、違う学校で出題される問題をつないでいくと、何をどこまで学習していけばよいのかが、よく分かります。そうすることによって、むやみに難しいとされる問題をやる必要もなくなりますし、学校側が求めている「考える力」の内容がよくつかめます。一つの課題を解決することによって理解力が深まり、身につけたその力によって他の多くの類題が解けるような、そうした学習をしなければ、「毎日30枚も50枚もペーパー問題をやらなければ合格できない」・・・と言った噂話に足元をすくわれるだけです。
「考える力」の育成は、量ではなく質の問題です。何十枚も機械的にペーパー問題を行うのではなく、一つの過去問を自分の力で解けるようになることが大事です。そこに過去問を使って基礎を点検し、応用力をつけるチャンスがあるのです。その意味で、正しい、過去問への取り組みが必要だということです。
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