第7回
昨年11月にスタートした受験対策も、早いものでもう3ヶ月が過ぎました。この3ヶ月間に、どこまで学習が進んでいるのか、何が解決して、何が未解決なのか、をしっかり把握しておく必要があります。また、学習することに対して、子どもがどのように意欲を示して取り組んできたのかも、今一度振り返ってみてください。
今の時期は、学習に相当関心をもって取り組む子どもと、少し自信をなくして学習を拒絶する子どもとに分かれていく時期でもあります。また、一方で、模擬テストの結果を見て、お母さまのイライラが募る時期でもあります。「どうして家でできたことがテストになるとできないのか」、「なぜ、聞き取りでこんなミスをしてしまうのか」・・・・マイナス部分にだけが目につき、叱る回数も増えてきているのではないでしょうか。しかし、叱ることで成績が伸びるならば、こんな簡単なことはありません。自信をなくさないように、また難しい問題に挑戦しようとする意欲をどう持てるようにするかを考えなくてはなりません。そうした意味で、つきあたる問題の多さは、今が一年間で一番多い時期ではないかと思います。教室に通う子どもたちの様子を見ても、そのことはよく分かります。
入試対策の学習において、自信をなくしたり、興味をなくしたりする多くの原因は、出来不出来に関する周りの大人の評価に関係しています。本来、子どもたちにとっては、幼稚園・保育園とは違った活動の中で、学ぶ楽しさを感じているはずです。にも関わらず、積極的に取り組めない原因は、多くの場合評価の厳しさにあるのです。また、家庭で取り組む勉強の仕方にも多くの原因があります。それは、
1 子供の理解の現状を踏まえないで、難しい問題ばかりに取り組ませている
2 事物経験を踏まえないで、新しい課題を最初からペーパーだけで取り組ませている
3 色々な領域が相互に絡み合い複合問題が多い過去問を、今のうちから課題として取り上げている
以上のような学習法では、子どもの興味・関心は続きません。とりわけ、すべてをペーパーで済まそうとする「ペーパー主義」の学習では、子どもの「考える力」を育てる事はできません。事物を使った経験を十分に積み、自分の力で答えに到達できるような試行錯誤する時間がどうしても必要です。昔のように、入試問題が知能テスト的な問題であれば機械的なトレーニングで解決できますが、今日のように、思考力が求められているような問題は、ペーパーだけのトレーニングでは理解できません。身体を使った活動と、手を使った試行錯誤の時間を保証しなければ、自分で考え方を工夫することはできないでしょう。
今、子どもたちの中に起こりつつある拒絶反応は、実は子どもの責任ではなく、教師や保護者の指導法に問題があるのです。「新しい学習課題は、必ず事物経験から始める」・・・この鉄則を守ってください。この原則を守って進んでいけば5月以降は、ペーパーのみでも様々な応用問題の練習が可能になってくるはずです。
では、ペーパーのみの特訓では十分な理解ができない「考える力」が求められる問題とは、どのような問題なのでしょうか。昨年の入試で出題された問題をここにいくつか紹介しましょう。
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1.図形構成
上にある3つのパズルを使って、左の形を作ろうと思います。それぞれどのパズルをいくつ使えばできるでしょうか。使うパズルのお部屋に使う数だけ○をかいてください。
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2.一対多対応と交換
上のお部屋を見てください。●は○2個に換えられます。◎は●2個に換えられます。それぞれのお部屋にある印を全部○に換えると、○はいくつになりますか。その数だけ右のお部屋に青い○をかいてください。
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3.広さ比べ
左のお手本を見てください。白いところと黒いところは広さが同じです。では、右の形の中で白いところと黒いところの広さが同じものを探して、青い○をつけてください。
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4.四方観察
動物たちが、机の上のつみ木をまわりから見ています。このつみ木は、上のお部屋のつみ木を使って作ったものです。それぞれの場所から見ると、どのように見えますか。右のお部屋から選んで○をつけてください。
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5.回転図形
上の見本を見てください。お部屋の中に白いチョコレートと、黒いチョコレートがあります。それぞれの下の形を見てください。見本の白と黒のチョコレートがある場所と同じ場所に形をかいてください。
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6.四方観察
ハートのお部屋を見てください。イヌから見ると、どのように見えるでしょうか。○をつけてください。クローバーのお部屋を見てください。絵のように見えるのは誰でしょう。○をつけてください。
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※上の問題の掲載予定の『過去問とっくん』は2013年4月発売予定です。(発売予定日は変更する場合がございます。ご了承ください)
以上紹介した問題は、ほんの一部ですが、教え込みのペーパートレーニングでは、到底対応できない「考えさせる」問題ばかりです。こうした問題を解いていくのに必要な力は、具体物やカード操作の試行錯誤によって身につけていくものです。
ペーパーだけの学習は何の準備も要りませんから、指導する側からすればとても簡単です。しかし、だからこそ分からない問題を言葉で説明し、その時は「分かった」とうなずいても、子どもは本当に理解してはいないのです。
知能テストのような同じ形式の問題が実際の入試に出れば、繰り返しのペーパートレーニングで十分ですが、今やそんな問題は出題されません。1回の指示で問題の意図をつかみ、解く方法を自分で考えて取り組まなければ、答えを導き出すことはできません。ペーパーだけの学習がいけないのは、こうした問題で要求される「考える力」が身につかないからです。
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