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来年秋に受験するものです。どのような考えで受験対策を考えたら良いですか (第3回目) |
久野泰可先生からのお答え
前回に引き続き、上記質問にお答えします
ペーパー学習の前にすべき大事なことがあります
「受験対策はペーパートレーニングだ」と考えている方は、ぜひその考えを改めてください。子どもたちの生活や遊びを再現し、事物に働きかける経験を通して「考える力」を身につけることがまずなされなくてはなりません。その上でペーパートレーニングを行うことが大事です。一年も前から来秋の受験に向けてすぐに過去問に取り組むような、間違った学習だけはしないでください。子どもの考える力の成長は、身体的な成長と同じように段階を踏んで実現します。基礎から応用へ、具体から抽象へというように、積み上げていかなくてはなりません。その積み上げは、残念ながらペーパートレーニングだけではできません。自ら物事に働きかける経験を積むことが、ペーパー学習の前提として必要です。
答えの根拠を必ず言葉で説明させてください
具体物を使った学習においても、ペーパーを使った学習においても、答えが出たら必ず「どうしてそうなるの?」と聞いてください。考え方がしっかりしていれば、たとえ、たどたどしい言い回しでも、考え方の根拠を言葉で説明できるはずです。逆に解き方だけを教え込まれた子は、答えが合っていても説明できません。言語を介して論理的思考力を育てるためには、まず説明させることが必要です。自分の考えや感じたことを、言語で表現することは、今の子どもたちはとても苦手です。そうした現状があるからこそ「説明させる」問題が入試でも増えているのです。
間違いには必ず理由があります
子どもたちの答えの間違いには必ず原因があります。それをしっかり分析しないで、叱りとばして大量の学習をしても、効果は望めません。一度学習したことであっても、難しい問題に取り組んでいったりすると、易しいはずの問題すらできなくなることもあります。その時に「もうやったことなのに、どうして間違えるの」と怒鳴ってみても、なんの解決にもなりません。なぜなら間違いには原因がはっきりとあるからです。たとえば
*質問で使っている言語的な言い回しが、理解できない
*何をどう答えたら良いか問題の意図が十分聞きとれなかった
*問題が複合化された場合、一つ一つの質問には答えられても、連続した質問にどう答えたら良いかわからない
*時間制限のため全部できない
*覚える要素が多すぎて覚えきれず、単純な聞き取りミスをしている
*同じ事を違う角度から聞いた時できないということは、本当に理解しているとはいえない
こうした原因をはっきりさせてから、その克服に時間をかけるべきです。それが効果的な学習法ということです。
母子関係のあり方が、合否を左右します
子育てや家庭での受験対策は母親だけの責任ではありませんし、父親が子育てに参加することはとても良いことだと思います。受験は家族一丸となって立ち向かわなければ、合格はいただけません。しかし子どもと長いあいだ接するのは母親であるし、子どももお母さんに褒められたい一心で頑張ります。私は、受験準備において母親が怖い先生役を担ったのでは、まずうまくいかないと考えています。母親はマラソンの伴走者のような立場で、ひとつの目標に向かって子ども一緒にがんばるのが、一番良い関係の取り方だと思います。また子どもが変わるとしたら、母親の考えが変わる時、または母親と子どもの関係が変わる時だと思います。良い意味でも悪い意味でも、母親との関係はそれだけ子どもの成長を左右するのです。お母さん自身が変わらなければ、子どもの弱点は変わりません。そうした意味で、小学校入試は「母親の入試」だと思う時がしばしばあります。
一枚のペーパーを大事にしてください
「子どもの背の高さぐらいになるまでペーパーをこなさなければ、合格できないのですか」とよく質問されます。いろいろな意味合いが込められていると思いますが、ペーパーは量ではありません。一枚一枚のペーパーで問われていることをしっかり理解することが大事です。実際に私たちも何千枚というオリジナルペーパー教材を持っていますが、全部やらなければ安心できない・・・という発想では、落ち着いて学習できません。しかも、実際の入試では、子どもたちにとって初めての問題、やったことのない問題がほとんどです。それだけ学校側も、工夫して問題を作っているからです。初めての問題を解いていくためには、基本となる考え方がしっかり身についていなければなりません。そのためには、一枚のペーパーをどれだけ深く理解したかが問われます。量を沢山こなすことより、一枚のペーパーを大事にし、いろいろな観点で質問し、より深く学習することが大事です。
合格を目指す以上、徹底して取り組んでください
受験のための準備教育は、最低1年間はかかります。その間、辛いことも沢山あると思います。多くの噂話で足元がぐらついたり、不安が先立ち落ち着いて家庭学習が出来なかったり、感情的になり子どもを叱ったあと、寝顔を見て反省したり・・・・そんなことの連続です。毎日毎日必死にがんばる子どもを見て、かわいそうに思うこともあるでしょう。しかし、受験を決意し「合格」を目指す以上、中途半端な気持ちでは乗り越えられません。なんとなくやってみて、だめなら方針を変えればよいというような取り組み方では、1年間の入試対策は続きません。家庭で出来ることはまず家庭で徹底させてください。家庭でやらなければならないことまで、高い月謝を払って他人任せにするような、「教育の外注化」だけは絶対に避けてください。どんな結果になるにせよ、家族一丸となって一つ一つの課題を乗り越えていくところに「お受験」を幼児期の教育として生かす最大のチャンスがあるはずです。目標を持ち、夢を持ち・・・・どうか1年間がんばりぬいてください。
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