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来年秋に受験するものです。どのような考えで受験対策を考えたら良いですか |
久野泰可先生からのお答え
1年後の試験を目指し、これから1年間どんな考え方で臨んだらよいのか。これまでの経験を踏まえて、大事なことをいくつかお伝えしましょう。
入試対策は特別な教育ではありません。
受験だからといって、特別な方法がある訳ではありません。発達段階に見合った「まともな子育て・まともな学習」をすることが大切です。カリスマ教師がいて、怖いお母さんがいて、毎日何十枚とペーパーをこなして、徹底的に教え込んで・・・というテレビドラマの「お受験」のイメージをまず払拭することが大事です。ある学校で配布された受験生の保護者に向けてのパンフレットの中で「子育ての総決算としての入試を」というメッセージがありましたが、その考え方を実行することが大事です。すべての経験が、入試問題になる時代です。机に向ったペーパーによる過去問対策だけでは、今の入試に対応することはできません。商業主義の誤った宣伝に惑わされないことが大事です。
正確な入試情報を持つこと
小学校受験の準備教育がゆがんでいく背景の一つは、入試に関する情報が学校側から一切開示されていないからです。そこに誤った情報が流される原因があり、その誤った情報で、受験生の保護者が右往左往し、足元をすくわれ、落ち着いて対策が取れない状況になってきています。その結果の最大の被害者は子どもです。落ち着いて、じっくり子どもと向き合うためにも「正確な入試情報」を獲得してください。とくに「どこまで難しい問題を学習すれば良いか」の判断は、実際の入試問題を正確に分析した上で行うべきです。振り落とすための難問奇問はひとつもないと断言できます。入試に必要もない難しい問題を与え、それを解くことが受験対策だと思いこまされないよう注意し、商業主義の誤った情報操作から子どもを守ってください。
子どもは必ず理解できるようになります。それを信じてください。
はじめて受験を経験するお母さんにとって一番の心配事は「本当にわが子がこんな難しい問題が解けるようになるのかしら・・」という見通しが持てない不安です。子どもの成長に見通しを持てないお母さんのとる行動はいつも決まっています。それは一日も早く過去問に取り組ませることです。しかし子どもの成長発達に支えられた「理解力」は一年も飛び越して、入試問題が今すぐに解けるわけではありません。理解できない問題をやるから教え込みにならざるを得ないのです。しかし、こんな方法でいくら早くからやっても、思考力が身につくはずはありません。そんなことは誰でも冷静になれば解ることなのに、暴走した母は、それに気付きながらも「このやり方が受験教育だ」と思いこまされているため、止まって振り返ることができません。何が暴走させるのか。それは他の子どもと比較されたり、自分で比較してしまうからです。もうこうなると「子どもの理解する道筋に合わせて・・・」どころではなく、母親同士の競争の悪循環にはまってしまうのです。
過去問はある時期から取り組めばよいのです。私は、5月以降と会員の皆様にはお伝えしていますが、個人差がありますから一概に言えません。ただはっきりしていることは、自分の力で解けるようになってから始めるべきで、そのための基礎作りが必要です。入試で求められる「考える力」の基礎をしっかり培ってから、実際の過去問に取り組むべきです。もし11月スタートの時点から、過去問に取り組ませるような指導者がいたら、その指導者は、子どもの認知の発達や、教科の系統性などを全く理解していない幼児教育の素人です。
子どもの理解の道筋に合わせ、基礎から応用へと、受験で問われるものの見方・考え方を時間をかけて育ててください。基礎学力を身につけるために、どうしても事物教育が必要です。物事に働きかけるチャンスを保証し、試行錯誤する時間が必要です。その働きかけの経験こそが、子どもの認識を育てることにつながるのです。
子どもは必ず変わります。それを信じて事物教育に徹してください。ただし時間は必要です。
受験は最大の目標ですが、ゴールではありません
どんな考え方で学習すれば良いのか。冒頭で述べたように、受験のための教育は特別な教育ではありません。幼児期における基礎教育をきちんとすることが大事です。最近の入試では、学校側も相当工夫して、良い問題をたくさん出しています。私たちの提唱する「教科前基礎教育」の内容がいまや、受験問題の中心になりました。以前のように知能テストの問題が根拠になったパターン化された問題はほとんど出ません。代わって、考える力を求める問題が増えています。また、これまではあまり出されることのなかった問題も数多く試験問題になっています。受験に合格さえすれば良いといった考え方は、教え込みの指導になりがちです。秋の受験は最大の目標ですが、そこをゴールとしてはいけません。将来の知的学習の土台づくりを目指す過程で、受験を捉えないと、受験が終わった途端、勉強に興味を示さなくなります。受験は目標であり、また別な意味でスタートなのです。決してゴールと考えず「合格さえすれば何でも・・・」という発想は捨ててください。
間違った受験対策で子どもをつぶさないようにしてください
間違った受験対策とは、
1・正確な情報を持たないために、噂で足元をすくわれてしまう
2・子どもの発達を踏まえないために、無理な課題を押し付けてしまう
3・教科の系統性を踏まえないために、基礎が何で応用が何であるかを指導者自身理解しない。そのため、学習したわりに考え方が身に付かない
4・物事に働きかける教育効果を無視し、ペーパーを使って解き方を教え込んでしまう
ということを指しています。そうした指導によって、子どもたちが意欲的に活動し、考えようとする芽を摘み取ってしまい、結果として勉強嫌いの子どもを作ることになってしまいます。学びのスタートの時点ですでに勉強嫌いな子を作ってしまったのでは、何のための学習かということになります。まともな教科前基礎教育こそが、今の時代に要求された受験対策です。
(次回につづく)
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