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図形・数量はある程度できますが、推理系の問題は苦手です。考える問題を克服するにはどうしたらよいですか
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久野泰可先生からのお答え
「推理系の問題」といっている中身が具体的にわかると良いのですが、たぶん、回転推理や魔法の箱、四者関係の推理・お話による関係推理などではないかと思います。
繰り返しのパターン練習で解ける問題ではなく、考える力が必要な課題だと思います。最近の入試問題はそうした考える力が求められるものが多いのですが、それは推理だけでなく、数や図形においても同じことが言えます。ですから推理だけの問題としてではなく、入試全体の中で、どんな思考力が求められているかをふまえた学習が必要です。そうした思考力を育てることが幼児期の基礎教育の目標であると同時に、最近の入試ではそうした問題がたくさん出始めています。
こぐま会では「教科前基礎教育」として5領域を定め、それぞれの領域ごとに大事な学習単元を設けて指導していますが、各領域の学習を通して育てたい「考える力」を、次のような10項目で考えています。「考える力」は、一つの単元の学習ではなく、いろいろな単元の学習を通して身についていくのです。
@ 物事の特徴をつかむ
A いくつかの物事を比較する
B ある観点に沿って物事を順序づける
C 全体と部分の関係を把握する
D 観点を変えて物事をとらえる
E 物事を相対化してとらえる
F 逆に考える
G ある物事をひとまとまりにしてとらえる
H 規則性を発見する
I AとB、BとCの関係から、AとCの関係を把握する
様々な学習単元を通じて身につけるべき思考力を10の観点でまとめましたが、こうしたものの見方が身についてこそ「考える問題」の解決につながるのです。
こぐま会では、学習内容を「未測量」「位置表象」「数」「図形」「言語」の5領域に分けて指導していますが、「考える」問題はどの領域にもあり、それを深く掘り下げて学習させることが大事です。
例えば、この中でも「観点を変えて物事をとらえる」学習は、次のようにいろいろな場面で可能です。
A.観点をいろいろ変えて仲間集めをする(分類)
B.相手の右手左手を考える(位置表象)
C.その場に行かないで、観点を変えてものの見え方を考える(四方からの観察)
D.増えたほうを考えるだけでなく、減ったほうも同時に考える(数のやりとり)
E.背が高くなったことだけを見るのではなく、細くなったことも考える(量の保存)
また「逆に考える」ことについては
A.長いほうから見て何番目は短いほうから何番目か(長さ比べ)
B.もう一度もとに戻したらどうなるかを考える(量の保存)
C.残っている量を見て、飲んだ量を系列する(逆対応)
D.入れた数から出てくる数を考えるだけでなく、出た数から入れた数を考える(魔法の箱)
E.出発点が示されて、そこから移動して到達点を考えるだけでなく、到達点が示されて、 そこから戻って出発点を考える(方眼上の位置移動)
F.時間的経過を逆に戻して、途中の抜けた数を考える(数における逆思考)
このように論理的思考力の育成にとって大事である「観点を変えて物事をとらえる」学習や「逆に考える」学習は、一つの単元だけでなく、様々な単元の学習を通して育てていくのです。こうした学習の結果として「考える力」は育成されるのですから、一単元だけの学習や解き方の教え込みでは育ちません。自分で考えられるようになるまでには時間がかかることも事実です。ですから我慢強く待つ姿勢が大人の側には必要ですし、ある日突然わかるようになったということも良くあるのです。
幼児の考える力は、様々な経験や試行錯誤を通して育っていくものです。だからこそ、物事に働きかける「事物教育」が大事なのです。
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