「お箸を使って、赤いおはじきを自分のお皿に入れてください」。講師の指示に従い、子どもたちが、「生活習慣」の課題に取り組んでいた。
おはじきを上手につまめなかったり、途中で落としてしまったりしながらも、時間内にひとつ残らず移し終えた。
幼児教室「伸芽会」の四条河原町教室(京都市中京区)で、11月20日に行われた4、5歳児の授業。3年保育の「年中」だが、来年の私立小学校受験まであと1年となり、教室では「新年長」として授業がスタートしたばかりだ。「これから1年で様々な実践形式の授業を体験し、大きく力を伸ばしていくのです」と、教務企画局長の飯田道郎さん(50)が説明してくれた。
小学校・幼稚園受験で知られる伸芽会は1956年の設立。本部は東京都豊島区で、首都圏1都3県に26教室、関西2府1県に3教室、計29教室を運営する。教育理念は、その名の通り幼児の興味の芽を伸ばすこと。例えば図形や数量の問題では、折り紙やおはじきで関心を引き、遊びながら学べるよう工夫する。
年長児コースでは、週2日、「総合」「志望校別」の2コマ、計4時間が平均的で、費用は月10万円程度という。
そんな東京の幼児教室の老舗が、四条河原町教室の開校で関西進出を果たしたのは2008年。今年、大阪市と兵庫県西宮市にも教室を設けた。以前も大阪市内の教室と業務提携し、指導方法を提供していた時期があったが、今回は本格的な展開となっている。
背景には、ここ数年、名門私立大の関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)の付属小学校が相次いで開校し、小学受験熱に一気に火が付いたことがある。
中学受験の「浜学園」(本部・兵庫県西宮市)は05年、未就学児童向けの「はまキッズ」を開設。中学・高校・大学受験の「京進」(本部・京都市下京区)も06年、「京進ぷれわん」を開校し、小学受験指導を始めた。そして、08年、「教室通いへのニーズが高まり、ノウハウを十分に生かせる」(飯田さん)と判断した伸芽会が進出した。
「関関同立」付属小の開校以前も、一定の小学受験層は存在した。しかし、首都圏に比べて私立小の数が少なく、私立の中高一貫校人気や公立高校への信頼が高いことなどから、お受験熱はそれほど高くはなかった。
相次ぐ私立小の開校が、幼児教育への特需をもたらしている。
メモ
関西では、2006年の同志社小学校(京都市左京区)と立命館小学校(同北区)を手始めに、08年に関西学院初等部(兵庫県宝塚市)、今年、関西大学初等部(大阪府高槻市)と、名門大学の付属小学校の開校が続いた。来春、同志社国際学院初等部(京都府木津川市)が開校予定。
(2010年12月24日 読売新聞から転載)
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