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 私立小学校 特集 4
   『日本私立小学校連合会 
     東京地区私立小学校教員研修会』

 

 

『日本私立小学校連合会 第47回東京地区私立小学校教員研修会』の研究報告を掲載します。

私立小学校では、よりよい授業を行うために部会ごとに研修会を開き、意見や提案を発表し、指導力向上に努めています。

是非、お読みください。

国語部会 魅力ある国語教師を目指して

昨年度から引き続き、国語部会は「魅力ある国語教師を目指して」というテーマで活動している。
今回は、午前中、低・中・高のそれぞれの授業公開、午後は、講演が行われた。  
一年生の授業は、星野真奈美先生による「おもいだしてはなしましょう」。自分が経験したことを絵に描き、それを見ながら友達に話すという学習である。となり同士で顔を寄せ合い、一生懸命話している姿が、とてもほほえましかった。  

四年生は木村太郎先生による物語文「ポレポレ」。明るく優しい主人公ピーターになりきって、自分あてに手紙を書くという学習である。 自分を振り返るとともに、クラスのことにも考えを広げていくという、落ちつきのある授業が展開された。

六年生は長浜博先生による「あの坂をのぼれば」。文章の途中から、子どもが続きを考えて書くという学習を行った。自分を少年に置きかえることで六年生としての考え方がよくわかる授業だった。

午後は、広島大学教授難波博孝先生の講演。「国語教育の不易と流行―コミュニケーションから考える」。 現在、コミュニケーション力をつけなければいけないということが盛んに言われているが、国語教育の中でどう力をつけていくか等、実際の学生の様子などを例にとりながらの講演で、充実した時間となった。 空気ボールなげのワークショップでは、参加者全員笑いながらの取り組みとなった。 (国立学園小学校)

 

 


算数部会 考える力を伸ばす授業

今年度の算数部のテーマは、「考える力を伸ばす算数の授業」である。追究していく中で考える力をどう伸ばしていけるのかを授業研究を通して明らかにしたい。  
これを受けて、学習院初等科で午前中は公開授業が行われた。  
二年生は大澤隆之先生による「1を分けよう(分数)」の授業だった。一枚の折り紙を合同な形ではないように四等分にした場合、そのうちの一つを子どもたちはどう四分の一と認めるかを問うていた。  

三年生は関口慎吾先生による「かけ算のひっさん」の授業だった。 並びが特徴的な数を積に持つかけ算を扱い話し合いを通して筆算を使わずに計算ができる理由を考え、九九で学習した計算のきまりに気づかせていた。

五年生は渋谷まり子先生の「図形の角」の授業だった。 五角形の内角の和、五百四十度を求めるのに様々な方法を導き、友達の考えと自分の考えを比較することにより多様な見方があることに気づかせていた。

午後は、国立学園小学校校長の守屋義彦先生に、「具体的な場面を通して『考える力を伸ばす算数の授業』を考える」というテーマで講演をいただいた。 「考える」について考えていることを話された上で、一から六年生まで実践された教材をもとに具体的に何を考えさせるかの持論を展開された。 今年も部会の参加者が二百名を超す盛況の中での一日研修であった。(成蹊小学校)


学校保健部会  不登校を具体的に学ぶ

学校保健部会では、今年度から「子どもの心と体〜実感から〜」をテーマに日々の勤務で感じていることから問題点を取り上げて取り組んでいる。  

午前の研修では、手塚晶子先生より、学習院初等科の保健についてお話しいただいた。保健室の体制、保健室利用状況、保健行事予定、保健調査書・歯磨きのVTRのご紹介、養護教諭としての働きについてお話を伺うことができた。

午後の研修では、埼玉県立大学保健福祉医療学部看護学科教授でいらっしゃる櫻田淳先生を講師にお招きして、「不登校の児童を支援する養護教諭の役割」というテーマでご講演いただいた。
不登校の定義、なぜ続くのかという理由、早期対応で大切なことなどを具体的に教えていただいた。 不登校児童が抱えるマイナスの言いにくい気持ちを代わりにこちらが言語化してあげることや、一人で頑張らずに、不登校児童にかかわる多くの教員・保護者などと一緒にそれぞれの人ができる支援を考えてみんなで助けることが大切だと教えていただいた。
一番印象に残ったのは、実際に櫻田先生がかかわった小学生の事例紹介だ。初対面でほめたり、軽食や運動を勧めて生活リズムを改善するなどの具体的な実践が効果的であることを学び、よい研修となった。 (光塩女子学院初等科)


理科部会  自然史的な見方、授業に取り入れる

六年生「金属の燃焼」の授業を染谷優児先生に見せていただいた。
学習活動の柱として、
@酸素中でのスチールウールの燃え方、
A燃えた際に二酸化炭素が発生するかということに授業の焦点をあてていた。

初めに予想と話し合い。児童の活発な討論の末、スチールウールは空気中の燃焼に比べて激しく燃える、燃焼の際に二酸化炭素は発生する、と予想した児童が多数であった。次に実験。染谷先生考案のインスタントコーヒーのあき瓶を使ったユニークな実験方法がとられた。
「うわぁ!すごい!」「線香花火のようだ」。スチールウールの燃焼のようすに児童は歓声をあげていた。また、スチールウールの燃焼では、二酸化炭素は発生しないという結果にも、児童は驚いていた。

午後全体会では、東京学芸大学教授、小泉武栄先生から「自然観察の視点―地形・地質・自然史から植物の分布を読む」という題で講演をしていただいた。
今回、小泉先生の講演を拝聴して、植物や動物、地形、地質、気候、水などありとあらゆる自然が実はつながりを持っていること、我々理科教育をするものにとってこのような自然史的なものの見方、考え方を普段の授業に取り入れていくことは、とても大切なことだと認識を新たにした。 (聖心女子学院初等科)


家庭科部会  「気付き」と「学び合い」重視

午前の公開授業は五年生の「調理の基礎を学ぶ」。
初めての調理実習を前に安全作業の留意点についての学習であった。教師の手描きの調理実習イラストをもとに進められた。まず、個々の児童が間違い探しの要領で改善すべき点を探し出す。次は、その「気付き」をグループの中で話し合う「学び合い」。その後に全体で確認をし、書画カメラや実物拡大投影器を活用しながら検証。最後にコンロの点火練習を行った。  

作業実習の安全指導は教師側からの伝達に終わりがちなことが多いが、「気付き」と「学び合い」を重視することで、自然な流れの中で確実に定着していくことを実感した。

午後は、日本カトリック神学院養成者、伊藤幸史神父の講演「風土(フード)食の祈り」。飽食と、食軽視が同時進行する時代にある今、現代人の「心」に焦点を当て、「心」「命」「食」のつながりについてのお話である。
医療現場での「命」と「食」、食品生産加工現場での「自然」と「食」、個食化の進む家庭の「食」と「社会」など、具体的な映像・文献資料と共に、食育の目指すべき方向が示されていく。
――命ある物が食べ物となり、食べ物が命となる――。
「いただきます」「ごちそうさま」と、毎日繰り返されるこの言葉の重さ、深さを、未来の世代に、受け継ぎ伝える家庭科創りとは。身近だが、大きな課題を托された有意義な研修会であった。 (文教大学付属小学校)


生活科部会  綿密な計画、柔軟な実践

まず鈴木純先生公開授業。とても落ち着いた授業で、単元は「えきたんけん」。駅の見学後の授業。改札の写真を皮切りに、「駅員さんの気持ちになって」考える。
話し合いの後半「誰のために駅員さんは、働くのか」と問題を絞り込み、そこから、自分たちの行動の仕方を考えるグループ活動に展開していった。  
特筆すべきは、電車ごっこ、見学、話し合い、また電車ごっこと模擬体験がスパイラルに行われること。気付きの質の向上が期待されるからである。必要に応じて、子どもたちにフォローや支援を行う、しっとりとした授業であった。  

さて午後は、恒例のグループディスカッション。
「飼育・栽培」「他教科とのつながり」「最近の子ども」の三グループに分かれ、活発な話し合いが行われた。
そして最後に、元杉並区立桃井第一小学校教諭の飯田榮子先生に、「生活科で育つ力―実践と研究を通して―」という題でお話し頂いた。
教室を飛び出しても授業が成立する生活科。子どもの自由な行動を大事にしつつ、そこから得るものの質が高まるよう、興味の種まき、観察、支援を的確に行っていく。学習が広がるように、指導計画段階で様々な学習要素が加わるように計画する。まさに「計画は綿密に、しかし、実践は柔軟に」とおっしゃる通りの実践も披露して頂いた。 (慶應義塾幼稚舎))


図工部会  小学生にどうカンナを扱わせるか

午前中の授業は工作室と図画室に分かれ、それぞれ三谷先生による五年生の「積み木パズル」の授業と杉山先生による二年生の「おさんぽにでかけよう!」の授業が行われた。
三谷先生の授業では、垂木の表面にカンナをかけるというシンプルな作業に、子どもたちが没頭していく姿が印象的であり、協議会でも小学生にどうカンナを扱わせるかについて意見交換が行われたが、三谷先生の、子どもをリラックスさせる言葉かけや関係の築き方が、刃物を扱わせる時の大きなヒントになった。  

杉山先生の授業では、様々な音からイメージしたものを、クレパスを使って大きな画面に「おさんぽをする」ように線で表現し、公園などのイメージに仕上げていくというもので、子どもたちが皆のびのびした線で表現できていたことがとても印象深かった。

午後は、女子美術大学日本画科教授でいらっしゃる橋本弘安先生をお招きし、「絵画材料の小宇宙」と題して素材から考える面白さについてお話していただいた。その後、石ころから絵の具をつくることや、三椏の枝の繊維から和紙をつくることを体験するワークショップが行われた。
我々はチューブに入った絵具を使わせることや、画用紙に絵を描かせることを当たり前に行っているわけだが、絵具や紙そのものを身近な素材からつくる体験は、子どもたちにとっても大切だということをあらためて感じた。(国立音楽大学附属小学校)


体育部会  体育本来の目的・意義・本質を追求

今回の研修会では、「体育熟考」というテーマを設定した。
昨年度の「体育再考(最高!)」からもう一歩踏み出して、体育本来の目的・意義・本質をより深く追求しようという狙いだ。体育という教科そのものをさらに深く掘り下げることが第一の目的。更にはそれによって、先ず教える側の教師が「やっぱり体育って最高!」と心の底から思えるようになること。これが二つめの目的だ。  

さて午前は、須藤恭友先生と寺内正彦先生による水泳の公開授業(六年生)を見させて頂いた。 男子児童全員の赤褌姿が印象的で、また大学生や社会人の補助が多数加わり、きめ細かな指導がなされていた。多くの指導者の助けにより、子どもたちは安心して取り組めるだけでなく、安全面の確保、技術向上にもつながっているようだ。
最終的には、海で泳ぐことを意識して指導しているそうで、顔を上げた平泳ぎを特に指導していることや、横泳ぎを採り入れているとのこと。海での水泳が最終目標というのは、我々日本人にとってはとても良いことだと感じた。

授業後には、学習院沼津游泳会の方々による小堀流日本泳法模範演技が行われた。あまり目にしたことがない泳ぎの連続で、とても興味深いものだった。海では游泳会の方々が補助をしているそうで、子どもたちにとっては心強い存在なのではないかと思うと同時に、日本古来の伝統を身近に感じることができるのはとても良いことだと思った。

午後は、「小学生のランニング指導についての提言」と題して、NPO法人ニッポンランナーズ理事長の金哲彦先生に講演をして頂いた。 ランニングそのものについてのお話に始まり、これからの体育に求められるのは、基本的な動きを身につけることである。 そして、子どものランニングの特徴や指導といった専門的なお話に続いて、最後はこれからの体育の可能性についてのお話があった。知・徳・体・食育のバランスが大切である、そして規律や協調性を学べる体育・体育を含めた他教科の授業効率を上げる体育・健康な生活の基礎作りをする体育を目指した指導をしていく必要がある、とのことだった。 質疑応答も活発に行われ、とても実りある研修となった。 掲げたテーマのとおり、体育という教科を熟考した一日だった。 (慶応義塾幼稚舎))


外国語部会 「できるようになりたい」気持ち後押し

午前中の授業公開がなかったことは残念ではあったが、昼食を挟んで学び深い研修を持つことができた。  
午前中は、日本英語検定協会児童英語推進室、児童英検課の皆様のご協力のもと、東初協外国語部会が実施した、東京私学英語教育の実態調査の集計結果の提示をしていただいた。
通知表のあり方や、筆記試験の有無など、私立小学校の独自性とともに、各年代に対して我々教員が期待している「身につけて欲しい英語力」に、大きな差異がないことが確認された。  

昼食後は、東京学芸大学名誉教授であられる杉田洋先生にご講演いただいた。 非常に楽しくわかりやすいことばで、評価のあり方について深く学ばせていただいた。ランキングのための評価ではなく、次の一歩を指し示し、子どもたちのやる気を促す評価のあり方、テスティングのおこない方、自己評価の有効性などについて、考えさせられた。
その後、日本英語検定協会の武内麻子氏から、児童英検がどのようなポイントを考えながら作られているのか等について伺った。 最後にグループディスカッションと質疑応答の時間を持つことができた。その場に居合わせた仲間たちと、日頃直面している評価についての悩みなどをシェアした。 今回の学びを足がかりとして、外国語部会は今後も、子どもたちのみずみずしい「できるようになりたい」気持ちを後押しするようなテストづくり、評価方法を、研究していきたいと思う。 (立教小学校)


学校図書館部会   子どもが自ら読書にとりくむ学校図書館

「子どもが自ら読書にとりくむ学校図書館〜本は心のたからばこ〜」を研究テーマに掲げ、本年度も研修を積んでいく。  
平成十八年の一月に新装になった初等科の図書館は、明るくかつ落ち着いたふんいきを保ちながら最新の機器、PCシステムを導入したすばらしいものだ。その中で「学習院初等科の図書館指導と授業について」司書教諭の有泉先生にお話を伺った。
図書館行事、ブックリストの作成、読書カードの利用など、魅力ある図書館作りを実践され、まさに「子どもが自ら読書にとりくむ」図書館といえる。  

午後は、画家で絵本作家のいせひでこ氏をお招きし「いせひでこの風のスケッチ帖〜物語の小さなタネを拾って〜」という演題でお話しいただいた。
一つのきっかけから、歩き、旅をしスケッチする。それを練って練ってテーマが生まれて一冊の絵本が描かれていく。ゴッホのひまわり、パリの古いアカシア、プラタナス・・・。
又三郎の見える風、聞こえる風、全てに拒否されたよだかが空に向かう時の風を描く。生きることの意味、命の大切さを、画家は一枚の絵、一冊の本に託す。
現場で子どもたちに本を手渡す私たちに、いせ氏は、ぜひ原画を見せてあげてください、そして絵本の力を信じて誇りをもって子どもに絵本を手渡してください、とメッセージをくださった。 (晃華学園小学校)


表現活動部会  ことばを使わず意志を伝える

[午前の全体会] 
トキワ松学園小学校の百合岡先生は、三年北組の子どもたちのために「うさぎとかめのその後のその後の話」という台本を用意して授業を進めた。最初の発表「ペンギンズ」は、ウサギの子がポーズを取っていたり、台本を持たないで演じる子がいたりと、初めての劇の授業とは思えなかった。「ラビッツ」は、ウサギ役の女の子がはりきって周りの子を引っぱっており、元気で優しいウサギを表現していた。「ライオンズ」は、舞台を工夫し、小体育館の入り口扉を舞台袖代わりに使って、舞台の範囲を広げていた。「チーターズ」は、最初から話がまとまらず心配していたが、練習では一度も通せなかったにも関わらず立派に演じきっていた。今回は同じ台本だったが、話し合い一つ、表現の工夫一つでどれも異なる味わいのある発表となっていた。  

[午後の全体会] 
俳優の庄崎隆志氏をお招きして、あらゆる「ことば」を一切使わないで自分の意志を相手に伝えるノンバーバル・コミュニケーションのワークショップが行われた。最初は、言葉以外の手段を使って、どうやったら相手に伝わるかを試行錯誤していたが、「サインネーム」「歩き方」「映画館」「オーケストラ」などの活動をするうちに、伝わりあえた喜びを感じることができるようになった。言葉が無くても伝えたい気持ちがあれば伝わる、伝えられるという自信や楽しさがわいてくることに感動した。普段、言葉だけに頼っていることを気付かされた、実りのある時間だった。 (桐朋学園小学校)


視聴覚部会  様々な機器の教育的活用模索

今年度の視聴覚研究部のテーマは「いっしょにやってみませんか?」だ。
様々な機器の教育的活用を模索し、その中から有効と思われるものを研究、実践していき、各教科や校務で役立てられればと思っている。  
さて、午前は四年生の情報の授業を見せていただいた。Wordの機能を使って一年生に学校のことを知ってもらうためのポスターを作るという単元だった。「学びあう子ども」がねらいの一つにあるとのことで、子どもたちが互いに声を掛け合い教え合っている様子が印象的だった。  

午後は、東京都eメディアリーダーの大久保輝夫氏(KDDI株式会社)を講師にお招きし、講演「インターネット・携帯電話等のトラブルから子どもを守るために」および「ファミリeルール講座」模擬体験を行った。
携帯電話やネットの利用実態、さまざまな危険、実際の被害状況など、実例を多く挙げて紹介してもらい、子どもたちを守るためにはハード面の整備と、家庭におけるルール作りの大切さを痛感させられた。後半のファミリeルールの模擬体験では、グループワーク形式でディスカッションやロールプレイなどを通して状況を整理し、そこから家庭でのルールを作っていくというものだった。
前半で感じたことを実際にどう考え、どうやっていったらよいかという一つの方法を紹介でき、有意義な研修となった。 (武蔵野東小学校)



※これからも私立学校の魅力が伝わる情報を掲載していきます。 お楽しみに!

協力:全私学新聞


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